米Yahoo! 新CEOに就任したCarol Bartz氏

米Yahoo!は1月13日(現地時間)、Carol Bartz氏を新CEOに任命する人事を発表した。既報の通り、同氏は米Autodeskの出身で、1992年から2006年までの14年間同社CEOを務めていた。当時3億ドル未満の売上だった企業を、約10年で15億ドル規模の世界的なCADベンダーにまで育て上げたことで知られる。

Microsoftからの買収提案の拒否やGoogleとの提携の破談を受け、11月に共同創業者のJerry Yang氏がCEO職の引責辞任を発表してから約2ヶ月で新CEO探しが終了したことになる。Bartz氏の出身であるAutodeskは、AutoCADなどの製品で知られるCADソフトウェアの開発メーカーで、1980年代の創立以来PC向けのCAD製品を提供し続けている。拠点はサンフランシスコの北方でシリコンバレーにほど近い米カリフォルニア州サンラファエル。近年、積極的な買収戦略を仕掛けながら世界最大のCADベンダーに成長し、2008年には米ビジネス誌のFast CompanyにThe World's Most Innovative Companiesの25番目の企業に選ばれた。Sun Microsystems、Digital Equipment (DEC)、3Mなどの企業の出身でもあるBartz氏は米IT企業の代表的な経営者の1人としても知られており、ブッシュ政権で産業アドバイザリであるCouncil of Advisors on Science and Technologyのメンバーに任命されたほか、Intel、Cisco Systems、NetAppなどの大手企業、そしてFoundation for the National Medals of Science and Technologyのボードディレクターを兼任している。

同氏はYahoo! CEO就任に際して「Yahoo!は素晴らしい資産や技術、非常に才能ある従業員に恵まれた世界的なブランドを持っている。その短い歴史の中で偉大な業績を成し遂げており、この企業を次のレベルに引き上げる仕事に協力できることを嬉しく思う。昨年は厳しい年だったが、いまは価値を創造するための途方もないチャンスが待っていると考えている」とコメントしている。米Yahoo!ボードチェアーのRoy Bostock氏も「次の成長の時代を導くリーダーに期待する」とのコメントを出しており、シリコンバレーを代表する経営者の来訪を歓迎しているようだ。

だが一方で、米Yahoo!を代表する女性エグゼクティブの1人、プレジデントのSue Decker氏が辞職する人事も同時に発表された。Decker氏はBartz氏への引き継ぎを行った段階で同社を離れる予定。同氏は2000年から約9年弱、ITバブル崩壊で一度低迷したYahoo!を中心になって支えてきた。

気になるのはMicrosoftとの関係だが、新CEO就任で事態が動くことはなさそうだ。Microsoft買収反対の強硬派といわれるJerry Yang氏が依然として同社ボードメンバーに在籍しているほか、中立またはMicrosoft寄りとも言われるDecker氏が辞職すること、そして何よりMicrosoft自身がすでにYahoo!買収に興味を失っている。発表同日のYahoo!株価も大きく反応しておらず、市場ではBartz氏の率いるYahoo!の動向を様子見といった印象だ。