日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は1月8日、同社のx86サーバ事業における2009年の戦略を発表した。キーワードに「日本を変革するサーバ」を掲げ、中堅/中小企業および地方企業のカバレッジ、パートナー支援、価格改定の3本を大きな新施策として2009年のスタートを切る。
日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 執行役員 松本芳武氏 |
同社エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 執行役員の松本芳武氏は「世界的な金融不況の中、企業のIT投資は予算削減対象項目のトップ3に入っている。これはITの経営に対する貢献が理解されていないということだ。我々ITベンダは、IT投資が企業の生産性を高めることを証明する必要があり、まさに2009年はIT業界にとって正念場」と語り、日を追って厳しさを増す感のあるIT業界をめぐる状況について「実際にビジネスの現場に立つ者の意見としては、(現実は)調査機関などが発表している予測数値よりも、もっとシビアだと思わざるを得ない」とする。
そのような情勢にあって、日本のIT投資は「メインフレームなどのレガシーが未だインフラの中心にあり、企業内には垂直統合型のシステムがはびこっている。インフラのメンテナンスがIT投資の多くを占めるため、(投資の)効果がわかりにくく不透明」(松本氏)という"遅れた"状況が続いており、これを変革していくためには「"守りのコスト"から"攻めのコスト"へと投資をシフトし、ブレードを中心とした水平統合型のシステムに移行させる」(同氏)ことが必要だとしている。
IDC Japanによる国内IT市場投資成長率の2007 - 2012年の予測。青が2008年9月時点の予測、黄色が2008年12月時点での予測。9月時点では実体経済がこれほど下降するとは予測できなかったのがわかる |
「インフラのメンテナンスのような"守りのコスト"ではなく、アプリケーションやインフラを刷新するような"攻めのコスト"にIT投資をシフトすべき」(松本氏) |
そのために日本HPが新しく打ち出した施策が以下の3本だ。
- 中堅中小規模企業、全国各地域の企業向け販売支援体制を強化…SMBおよび地方企業を担当する営業部員を増員(大企業担当からの配置換えなどで)
- パートナーの提案型営業を支援するための営業人材育成プログラムを新設…パートナー向けに営業教育コースや認定資格を新設
- サーバおよびストレージ製品の大幅価格改定…「ProLiant」「BladeSystem」「StorageWorks」の575製品の価格を平均20%、最大67%減
日本ヒューレット・パッカード エンタープライズサーバ・ストレージ事業統括 ISSビジネス本部 本部長 橘一徳氏 |
いずれもブレードを中心に据えた施策だが、同社エンタープライズサーバ・ストレージ事業統括 ISSビジネス本部 本部長の橘一徳氏は「ブレードは当社にとって最も重要なソリューションのひとつであり、また市場からの需要も日を追って高まってきていることを実感している。ラックサーバからのブレードへの転換をさらに図っていきたい」と語り、「投資効果の高いITソリューションを提供することで、日本企業の成長に貢献することが重要。具体的には、国内x86サーバ市場で30%、国内x86ブレードサーバ市場で50%のシェアをそれぞれ目指す」(橘氏)としており、企業規模を問わず、日本全国にブレードを推進していくことを目標とするという。
Hewlett-Packardは2008年11月から新会計年度がスタートしている。10月末に締めた2008年度の売上は対前年比13%増の1,184億ドルだったが、この数字は金融不況の影響が甚大になる前のものだ。世界トップクラスのITベンダであるHPも、次の四半期決算ではこの不況の影響を免れないと予想されるが、果たして松本氏の言う「正念場」をHP自身はどのようにドライブしていくのか、2009年第1四半期(11月 - 1月)の数字に注目したい。