国内では依然、企業のITシステムで、大型汎用コンピュータが重要な地位を占めているなか、日本オラクルは、これらのいわゆる「レガシーシステム」を、同社の製品やサービスを駆使し、低コストのオープンシステムに取り込む「レガシー・モダニゼーション」を提案、なかでも移行に伴う影響、危険性をできるだけ小さくしながら、オープン化を目指す「リホスト・マイグレーション」と呼ばれる策を重点化している。

日本オラクル システム事業統括本部 シニアディレクター 安藤秀樹氏

国内の大型汎用機の領域は「無視できない重要なマーケット」(日本オラクル システム事業統括本部 シニアディレクター 安藤秀樹氏)だが、同時にユーザーにとって大きな課題でもある。「大型汎用機への投資予算は年々、抑えられる傾向にあるが、運用や保守に費用がかかり、なかなか"攻め"のための投資がしづらい」(同)からだ。その反面、「システムを急激に変化させたり、再構築したりするのは容易ではない」(同)ことも事実だ。

大型汎用機の「レガシー・モダニゼーション」には、さまざまな段階、策がある。たとえば、大型汎用機の運用、保守を外部委託してしまう手もあるが、アプリケーションの変更などに機動的に対処できなかったり、法令順守の監査が十分にできるかどうかなど「リスクが伴う」(同)面もある。あるいは、Webサービスとの連携により、大型汎用機で最新の技術を使えるようにする方法もあるが「運用コスト自体はあまり減らない」(同)。また、アプリケーションを書き換えるとの手段もあるが「性能やスケーラビリティー確保の点でリスクもある」(同)など、弱点も指摘されている。

一方「リホスト・マイグレーション」は、「大型汎用機のアプリケーションやデータなどソフト(OSは別)を基本的に変更せずに、ハードは変え、従来蓄積されてきた資産を活かしていく」ことを目標とする。ハードは内外のオープン系サーバに、OSは、Windows、UNIX/Linuxなどに、データベースはOracle Rac(Real Application Clusters)に置き換えていくことを想定している。

日本オラクル システム事業統括本部 シニアマネジャーの佐々木政和氏

「リホスト・マイグレーション」で最も重要といえるアプリケーション資産の移行、活用では、同社が買収・合併したBEA Systemsの主力製品である「BEA WebLogic Server」「Tuxedo」を活用する。Javaによるアプリケーションは前者で、C、C++、COBOLによるものは後者で対応できる。日本オラクル システム事業統括本部 シニアマネジャーの佐々木政和氏は「汎用機のアプリケーションは、コンバージョンツールにより、90数%以上、自動的に変更が可能」と話す。

汎用機のアプリケーションのうち、Javaで変換されるものは、「WebLogic Server」で制御することができる。一方、C、C++、COBOLで変換されるものは「Tuxedo」で制御することが可能だ。これらのように変換されたアプリケーションは、「WebLogic Server」と「Tuxedo」を仲介する「WTC(WebLogic Tuxedo Connector)」により、双方向で交信することができるととともに、アプリケーション同士、互いを呼び出すことができる。このような措置により、汎用機のアプリケーションはオープン環境で利用できるようになるという。さらに、「WTC」は、「WebLogic Server」と「Tuxedo」を相互運用するアプリケーションの開発とサポートも可能だ。また、「WebLogic Server」、「Tuxedo」いずれも、「Oracle Rac」と円滑に連携できる。

「Tuxedo」は本来、トランザクションの処理、管理のための、いわゆるTPモニタとしての定評と実績があるわけだが、同社では、「リホスト・マイグレーション」のための主要な構成要素と位置づけている。同社によれば、多数のクライアントからの、データベースとの交信や、サービスへのアクセスは、「Tuxedo」のような仲介役なしには、非常に複雑になるという。「Tuxedo」は、スケジューリングの管理、負荷分散、サーバー間通信の制御などを担当し、クライアントと、データベース、サービス側の接続を整然なものとする。これらの「BEA製品が、Oracle Fusion Middlewareの体系に組み込まれたことで、データベースとの連携が強化され、(TPモニタに留まらず)もっと新しい領域に打って出ることができる」(安藤氏)ようになった。

同社では、「WebLogic Server」「Tuxedo」「Oracle」の組み合わせによる「リホスト・マイグレーション」は、汎用機と同等の信頼性、可用性を実現し、COBOLにより構築された資産を再活用しながら、オープン系のシステムへの移行が可能となり、さらには、Java EE基盤の活用により、俊敏性も確保できる、としている。同社は、これら「3つの組み合わせ」によるシステム体系を基盤に、さらにSOA環境との連携につなげていくことも考えており、「レガシー・モダニゼーション」をいっそう推進していく意向だ。