17日、NTTデータは記者セミナーを開催し、現在のシステム開発における上流工程の課題とともに、同社の取り組みについて説明した。
NTTデータ フェロー システム科学研究所 所長 山本修一郎氏 |
セミナーではまず、NTTデータ フェロー システム科学研究所 所長の山本修一郎氏が、上流工程をめぐる最新動向について講演。山本氏は、要求定義工程でシステム全体の70%の欠陥が発生しているものの、要求定義工程における発見率は3%に留まっている点を挙げ、要求定義での誤りの検出が受入試験まで発見さないという現在のV字型開発モデルの欠点を指摘。その上で「我々はこの部分の見直しを進めなければならない」と語った。
その背景を山本氏は「以前は何をシステム化するのか(何を自動化するのか)が明確になっていたが、現在のソフトウェア開発は、何のためのシステムを作るのかがわからず、その機能で本当に十分なのかという検証もできないという事情がある」と説明する。そして、「ソフトウェア開発がビジネスプロセスでイノベーションを起こすこととイコールになっており、ソフトウェア開発がより複雑になっている」と語った。
NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ 部長 小橋哲郎氏 |
そこで同社では、開発プロセス・開発環境(フレークワーク、開発支援ツール)・サポートを一体とした、 システム開発の総合ソリューション「TERASOLUNA(テラソルナ)」において、開発プロセスの上流部分の整備作業を進め、来年4月から提供を開始する予定である。
NTTデータ 技術開発本部 ソフトウェア工学推進センタ 部長の小橋哲郎氏は、次期TERASOLUNAについて、「『上流』部分の整備」「発注者ビュー検討会の成果採用」「要件定義書の定量的品質評価の試行」を、主な改訂トピックとして挙げた。
「上流」部分の整備では、方法論を整備。法人分野で多くの実績がある「ITグランドデザイン」をベースに、システム化の目的をはっきりさせるために利用するMOYAといった、これまで同社社内で実績がある方法論や、社外のベストプラクティス・標準である「発注者ビューガイドライン」や「BABOK」を組み合わせ、新体系に整備していく予定だという。
発注者ビューガイドラインは、情報システムにおける「仕様」について、ユーザーにわかりやすい記述方法や合意方法を検討することを目的とした発注者ビュー検討会が作成したガイドライン。TERASOLUNAでは、画面編はすでに導入済みだが、次期バージョンでは、システム振舞い編とデータモデル編を導入する予定だという。
BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)は、ビジネスニーズを特定し、ビジネスソリューションを決定するための知識体系で、ビジネス上の問題点は把握しているものの、それをシステムでどう解決できるのがわからないビジネス側と、システムに盛り込むべき機能が明確にならないため、要求定義を確定できないIT側の橋渡しをする「BA(ビジネスアナリスト)」の役割を担う。BABOKには、組織が抱える業務面での問題を理解し、その問題を解決するための必要な機能を明示し、ソリューションを提案するためのタスクやテクニックが多数含まれているほか、互いの合意を形成、衝突を回避するコミュニケーションに関する内容も含まれているという。ユーザーは必要に応じてこれらを選択し、組み合わせて利用することができる。また、ビジネスを達成するために複数の代替案を立て、それを検証・評価することも可能だという。
同社では、BABOKに対し大きな関心を持っており、TERASOLUNAにどのように取り込んでいくか今後検討を進めていく。
BABOKについては、IIBA(International Institute of Business Analysis)が普及に取り組んでおり、日本でもIIBA日本支部設立準備室ができ、今月中にも正式に日本支部が設立される予定である。
また、要件定義書の定量的品質評価の試行では、要求定義書も問題点を指摘する品質フィードバックレポートを導入するという。