グリーン・エネルギー・パートナーシップのバナー。エコプロダクツ展内でも、ブースにこのロゴマークを貼っている企業がところどころに見受けられた |
12月11日から13日まで東京ビックサイトで行われた、エコプロダクツ展2008。その中日の12日に行われたのが「グリーンエネルギー利用拡大セミナー」だ。このセミナーは、個人や企業がグリーンエネルギーを気軽に、そして有効に使ってほしいとの目的で開催されており、今年9月からはじまって3回目の開催となる。
主催は、6月30日に設立した「グリーン・エネルギー・パートナーシップ」と経済産業省・資源エネルギー庁。グリーン・エネルギー・パートナーシップとは、グリーンエネルギー普及・拡大へのさまざまな行動を続けていく団体。参加者は、グリーンエネルギーの普及・拡大に賛同する企業・団体、証書発行事業者、発電事業者、自治体などだ。会長はソニー株式会社の代表執行役社長の中鉢良治氏。
まず「グリーンエネルギー利用をめぐる現状と課題」と題して、経済産業省資源エネルギー庁の川原誠氏がプレゼンテーションした。
グリーン・エネルギー・マークとグリーン電力証書
グリーン・エネルギー・マーク |
そもそもグリーンエネルギーとは、自然の力から電気や熱などのエネルギーを得ることで、風力・太陽光・中小水力・バイオマス・地熱などがある。どんなに発電しても、環境への負荷がほとんどないものばかりだ。ただ、天候の変化などから常に一定のエネルギーを得られなかったり、通常の発電所などよりコストがかかるのが欠点。そんなグリーンエネルギーを、誰もが間接的に利用するための仕組みがふたつある。ひとつは2008年5月に発表された「グリーン・エネルギー・マーク」のついた商品を買うことだ。
この「グリーン・エネルギー・マーク」のついた商品は、グリーン電力を一定以上の割合でまかなわれている商品に対してつけられるもので、どの工程で何%使っているかを商品に明示するものである。すでにシャープの液晶テレビ、AQUOS Rシリーズや、朝日新聞の日曜版、カゴメの野菜ジュースなどにつけられているという。
もうひとつは、今さまざまな企業などで買われている「グリーン電力証書」だ。すでに多くの企業がグリーン電力証書を購入しているが、上位3社はソニー、野村ホールディングス、ヤマダ電機。とくにソニーは、3,150万kWhと他企業よりも群を抜いている。ソニーは自らグリーン電力証書の仕組みを開発しており、グループ会社のソニー銀行や他数社でも、2008年から100%グリーン電力で稼動をはじめているという。
現在は、そのグリーン電力証書を使ったコンサートやイベントも多く行われ、地方自治体でも同様の取り組みがされているという。横浜市では、自らが風力発電事業者となり、市民債で集めた費用によって風車(ハマウィング)の建設や運営を行っている。2007年より発電を開始しており、、発電された電力はグリーン電力証書と共に、風力発電事業を応援する地元企業に購入されるという仕組みだ。
その他、グリーンエネルギーに関する取り組みなどは、グリーン・エネルギーポータルサイトで見ることができる。2008年の11月から12月には、全国16都道府県、40箇所以上で「グリーン・クリスマス・フェスタ」と称し、グリーン電力証書を取得したイベントやイルミネーションが開催・点燈される。
グリーン「熱」証書や好きな地域のグリーン電力を選べる"ふるさと"グリーン電力証書も
また、経済産業省ではグリーンエネルギーの新たな活用法として、グリーン電力、ならぬグリーン「熱」証書も検討しているという。しくみはグリーン電力証書と同じで、2008年5月からモデル事業を行い、制度面について詰めているところだそうだ。
そして「"ふるさと"グリーン電力証書」も考案中だという。「ふるさと納税」のように、地域で発電されるグリーン電力を応援しよう、というしくみだ。これからは、証書に原産地の名前を明記し、都市部にあるアンテナショップなどで販売できたらというビジョンを描いている。
これからの課題をセミナー後に経済産業省の方に伺ったところ、現在は、省エネ法など日常的にグリーンエネルギーを活用できる法律が整っていないという。今後、その法的な面などを改善し、より活用しやすくするために、まずはさらにグリーンエネルギーを利用してもらう必要がある、と話していた。
グリーン電力証書は「よりよい未来を選ぶ人たちの『こころざし』」証書
グリーン電力をめぐる新しい取り組みとして、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏から「1億人のグリーンパワー。」のプレゼンがあった。現在、エネルギー市場は世界で爆発的成長を遂げているという。それは2004年には322億ドル(約3兆円)の市場規模だったのに対し、2007年には1484億ドル(約15兆円)と、約5倍の伸びを見せていることでもあきらかなのだとか。一方、日本でのグリーン電力証書の市場規模も、2006年までは微増だったのに対し、2008年上半期分までですでに2万kWhと、約4倍の伸びを示しているそうだ。
そんななか、さらに利用を伸ばして行こうという目的のキャンペーンが「1億人のグリーンパワーキャンペーン」。「グリーン電力を選びます!」という宣言をWEBサイト上ですることができたり、東京国際映画祭とのコラボレーションや関連イベントなども数多く行われているそうだ。最後に、飯田氏は「グリーン電力の価値は、それ自身の環境価値のほかに、よりよい未来を選ぼうとする人たちの『こころざし』を紡ぐこと」と言い、締めくくった。
現在グリーン電力証書は、企業のためのもので、個人向けとしては1枚につき10kWhが買える「エナジーグリーンパスポート」というものが販売されているだけだ。今後、個人利用をさらに伸ばしていくしくみを経済産業省が検討中だという。そして、さまざまな活動が起こっている現在でも、日本の自然エネルギーの導入は全体の0.96%。イベントや特別な日だけでなく、日常に自然にグリーンエネルギーを取り入れることができる動きは、まだまだこれからだ。