東日本旅客鉄道では、「燃料電池を搭載した鉄道車両(電車)の本線走行試験」について報告したほか、今後の課題について発表した。
燃料電池を搭載した鉄道車両でCO2削減
東日本旅客鉄道 JR東日本研究開発センター 課長 古田良介氏は冒頭、鉄道業界の環境負荷について、日本では圧倒的に鉄道による輸送が多く、自営の水力発電所などから電力を供給している同社の鉄道は、乗り物の中で最もCO2の排出量が少ないが、年間消費電力は運輸業界の中で3番目、鉄道部門の中では1番多いことを説明。新しい動力源による環境に優しいシステムチェンジとして、2000年からは第1ステップとしてディーゼルハイブリッド方式を開発、第2ステップとして2006年より燃料電池ハイブリッド方式への車両改造、走行試験を進めている。
燃料電池ハイブリッドは、一般気動車より燃料からの効率(総合効率)は良いが、ディーゼルハイブリッドは超えられておらず、古田氏は「メーカーには総合効率が75%を超える燃料電池を考案してもらいたい。JR東日本では水素を作るところから始めるので、製造過程でCO2を出さないようにしたい」と話した。 燃料電池ハイブリッド電車の構造は、65kwの燃料電池を2台、容量400Lの水素タンクユニットを搭載し、屋根にはリチウムイオン式・19kwhの二次電池を設置。「燃料電池の出力は二次電池に蓄電されるようになっており、加速を始めると燃料電池の発電が始まって出力が最大になった時点で二次電池との出力で加速する。惰行中は燃料電池の出力はまた蓄電され、ブレーキで減速する際はモーターの回生電力も蓄電され、次の加速に備える」という。
燃料電池ハイブリッド電車は走行試験も行いながら改良が進んでいるが、走行距離目標500kmに向けて現在の10倍以上の水素搭載量が必要で、コストが現在200万円/kWなのを100分の1である2万円/kWに低コスト化しなくてはいけないなど課題は多いようだ。