文化庁は16日、私的利用を目的とした録音録画機器に課金する「私的録音録画補償金」の課金対象などについて議論する小委員会の第5回会合を開き、同委員会の報告案について了承を得た。報告案では、今年5月に文化庁が提案した、iPodなどの携帯音楽プレイヤーなどを課金対象に含める案について、「関係者の合意が得られなかった」と結論づけている。
メーカー側と権利者側の意見調整が難航
私的録音録画補償金制度は、私的使用を目的とした個人または家庭内での著作物の複製について、一定の割合で録音録画機器のメーカーから補償金を徴収し、著作権権利者への利益還元を図るもの。
iPodなどの携帯音楽プレイヤーやHDDレコーダー、次世代DVD、PCといった現行の補償金制度外の機器についても対象に含めるよう求める権利者側と、著作権保護技術の進歩を理由に同制度の縮小を求めるメーカー側の主張は大きく異なっており、文化庁の「私的録音録画小委員会」で両者の調整が図られてきた。
今年5月に開かれた同委員会の第2回会合で文化庁が提示した同制度の見直し案では、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画を前提とし、iPodなどの音楽プレイヤーとHDDレコーダーを補償金の課金対象とすることが提案された。
だが、見直し案に従えば音楽プレイヤーやHDDレコーダーに課金されることになるメーカー側は、「縮小することになっているはずの私的録音録画補償金制度が、逆に拡大されることになる」と反発。
これ以後2回にわたって開かれた委員会でも権利者側との意見調整はつかず、文化庁の提案の見送りがほぼ決定的となっていた。
中山主査は「責任を痛感、申し訳ない」
16日に開かれた第5回会合では、委員会での議論をまとめた報告案が事務局より提出された。
報告案では、「現状では補償金制度の見直しについて関係者間で様々な点において意見の相違が存在しており、関係者間の合意がみられるとは言い難い状況となっている」と指摘。
委員からはこの結論に対する異議は出ず、報告案は委員会で了承された。この時点で、文化庁の見直し案の同委員会での合意見送りが決定した。
委員会の主査を務める西村あさひ法律事務所顧問の中山信弘氏は、会合の最後に、「今回の問題は著作権がデジタル時代にどう対応していくかの問題の一部分だが、関係者間の合意が得られず、責任を痛感している。申し訳ない」と無念の意を表明した。
文化庁 著作物流通推進室長の川瀬真氏は、「これまでの議論は決して無駄ではなく、論点が整理された。今後、関係者間の利害調整の場を文化審議会の外に設けることも考えられる」と述べ、2009年に文化審議会とは別の場所で議論する可能性を示唆している。