ヤフーとネットスターが事務局を運営する「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は15日、今年5月から12月まで行った全6回の会合をもって終了した「第1期活動」の報告書を公表した。同報告書では、SNSやブログ、掲示板などの「双方向利用型サイト」を中高生が利用する際、保護者が参考にする「リスク評価モデル」を提案している。

「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」は、子ども達のネット利用に関する調査・研究を行い、保護者やサイト運営者に情報を提供するため、今年4月に発足

群馬大学特任教授の下田博次氏、お茶の水女子大学教授の坂元章氏、品川女子学院校長の漆紫穂子氏、浜松大学講師の七海陽氏ら6人がメンバー。「利用者のリテラシーレベルに配慮した双方向利用型サイトの運営状態」を第1期テーマとし、SNSやブログ、掲示板など、利用者が書き込みなどをできる「双方向利用型サイト」のリスクを保護者が評価する際に役立つ「リスク評価モデル」について調査・研究活動を行ってきた。

また、保護者向けに、子どもネット利用に伴うリスク教育を行うための教材「中高生のお子さんを持つ保護者のためのインターネットセーフティガイド」を開発。9月末に無償公開した。

「中高生のお子さんを持つ保護者のためのインターネットセーフティガイド」トップページ画面

9月には、子どものネット利用における親や学校、企業それぞれの役割をテーマとしたシンポジウムを開催。さらに、上記リスク教材を使ったモデル講演を、九州地区を皮切りに11月24日から全国高等学校PTA連合会と共同で開始。今後、全国各ブロック(九州地区を含め9ブロック)を巡る予定となっている。

お茶の水女子大学教授の坂元章氏

報告書公表の記者会見では、研究会の座長を務めるお茶の水女子大学の坂元氏が、研究会設立からこれまでの活動の経緯・実績をあらためて説明。今後の活動については、第1期活動結果のフォローしていくと同時に、2009年1月から、双方向利用型サイトのリスク評価モデル作成に代わる、新たなテーマへの取り組みを行っていくことを明らかにした。

その後、ヤフーとともに同研究会の事務局を務めるネットスターの営業マーケティング本部 広報部 部長の高橋大洋氏が、同モデルについて述べた。

ネットスターの営業マーケティング本部 広報部 部長 高橋大洋氏

まず、「双方向利用型サイトのリスク評価」をテーマに選定した理由について、「保護者では知らない人も多いかもしれないが、子どもたちのネット利用では、SNSやブログ、掲示板などの双方向利用型サイトになっている。こうしたサイトはいわゆる『違法・有害サイト』ではないがさまざまな問題が発生している」と説明。

さらに、「双方向利用型サイトから生じる問題は、不適切な書き込みによるトラブルの発生もあるが、むしろ、悪意のある大人による『誘い出し』や広告やリンクで『好ましくないサイトへの誘導』が行われている点にある」と指摘。「これを防ぐため、サイトが提供する機能面での配慮が必要」と述べた。

その上で、「こうしたサイト側の配慮について、提供機能別に評価する基準となるのが、第1期活動で作成した評価モデルになる」と話した。

評価モデルでは、(1)『誘い出し』につながるダイレクトコンタクト機能面での配慮、(2)『好ましくないサイトへの誘導』につながる機能面での配慮、(3)『長時間利用』につながるサイトへのアクセス促進機能面での配慮、に提供機能を分類。

15日公表された「双方向利用型サイト」の評価モデル

それぞれの機能について、最低限の配慮を示す「レベル1」から、配慮を最高水準で行っているとする「レベル5」まで、サイト側の機能面での配慮の段階を示している。

高橋氏は、「最高水準(レベル5)であれば、低学齢の子どもでも安心して利用できる、最低水準のレベル1であれば、子どもの利用には高いリテラシーが求められる。レベルに応じ、子どもにサイトを利用させるかどうか、保護者が判断する基準としてくれることを期待している」と話した。

研究会では、評価モデルの活用法について、PTAやNPO法人などでの利用も想定。これらの団体と連携し、サイトごとの評価結果一覧表を作成することなども、検討している。