エコプロダクツ展2008では、再生可能エネルギーのうちのひとつにも数えられる、バイオマスに取り組む企業や団体を29社集めた「バイオマス総合展2008」を展開していた。バイオマスとは動植物由来の資源のことで、いわゆる生ゴミや牛糞、下水汚泥から、農業者の廃棄物である藁や籾殻、さらには今、燃料への加工を問題視されているとうもろこしや大豆までも含む。このさまざまな「ゴミ」や作物から、エネルギーや新しい製品という「宝」を生み出そうとしている企業や団体は増えてきており、面白い取り組みをしているところもいくつか見受けられた。「カーボンニュートラル」「リサイクル」「新たな雇用の創出」「農業の活性化」など、あらゆるメリットがあるバイオマスの今を、少しのぞいてみよう。
すでに151市町村がバイオマスタウン化へ
まずはバイオマスの有効利用の促進・普及をはかる、社団法人日本有機資源協会のブース。ここではおもにバイオマスプラスチックの展示を行っていた。バイオマスプラスチックとは、工業・飼料用の「デントコーン」などから、でんぷんを取り出して糖にし、発酵させて作っていくプラスチックだ。素材としてバイオマスプラスチックを利用した製品には、トレードマークがつけられるという。
CDプラスチックケースやリモコン、プランターなどプラスチック製品なら色んなものが展示されていた。セロテープなどのテープ類もバイオマス |
育苗用などに使うポット。生分解性なので、このまま地面に植えても問題ない |
バイオマスプラスチックの生産量は約8.7万t(2003年)。日本全体のプラスチック生産量のうち0.5%程度だが、確実に生産量が増加しているという。
また市町村単位で取り組むバイオマスを、上手に取り入れた地域づくり「バイオマスタウン構想」も推進している。平成14年に国は「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定。平成18年3月には、これまでの状況を見直し、京都議定書を踏まえてバイオマスタウン構想のさらなる加速化をはかっている。具体的には、交付金を設定するなどしているが、日本有機資源協会では「バイオマスタウンアドバイザー」を設定。地方公共団体等に構想作成の支援から、関係者の紹介、バイオマス関連の事業化の支援などを行っていく。バイオマスタウンと公式に名乗れるようになるためには、廃棄物系バイオマスの90%以上を利活用するなどの基準を満たしていればよいという。すでに大分県日田市や岐阜県白川町など151市町村がバイオマスタウンとして公表し、活動を開始している。
「びっくりドンキー」のアレフがいちはやくメタンガスを有効利用
バイオマスからメタンガスを生成し、複数の施設で需要と供給のネットワークを構築する「プチ・バイオガスタウン化」を目指しているのが、バイオガス・ネット・ジャパン。商社の兼松株式会社や日本総研など11社の合同会社だ。メタンガスは、様々な有機物が混ざってしまった混合物から発生させることが可能。しかし、そのままだと60%のメタンガスを含んだ空気が生成されるので、さらに精製して圧力をかけたボンベに詰める作業が必要となる。その精製・圧縮する部分をコーディネートするのも、バイオガス・ネット・ジャパンの仕事だ。圧縮されたメタンガスは、自動車の燃料として使われたり、まさにガスとして家庭や事業所などで使うことができるという。
すでにバイオガス・ネット・ジャパンが関わって、北海道の酪農家で作ったメタンガスを、株式会社アレフの工場内のボイラー燃料として使用する実証実験を開始。今年の7月からはじまっており、企業がメタンガスを活用したほぼ初めての例となった。
農家の廃棄物に対する負担を軽減、農業の活性化にも
バイオマスを利用していくことにより、有料で廃棄していた農家の産業廃棄物が有効利用できるようにもなる。日環エンジニアリングは、1日に換算して23トンの堆肥を、農業者などからの産業廃棄物から作るプラントを開発。すでに全国で800台以上も納入されているという。
神鋼造機とUFOアグリの共同ブースでは、竹や木材の端材をすりつぶし、綿のようなふわふわの物質にする(膨潤処理)機械「植繊機」と、その運用法を提案していた。膨潤処理された竹などは、家畜の飼料になるほか、空気をたくさん含んでいるので発酵しやすく、堆肥になりやすいのだとか。また、作物の根元に置いて土壌の保温・保湿、雑草が生えるのを防ぐなど、さまざまな活用法が考えられる。植繊機の開発・販売を神鋼造機が、植繊機の導入や膨潤処理したものの利用法、堆肥の作り方などの農業指導などをUFOアグリが担当する。
ハエが飛び回る箱を展示して人目を引いていたのが、ZOOコンポスト。豚や鶏、魚に良質なたんぱく質飼料として提案されているのが「トロプス」というイエバエの幼虫。そもそも、ハエの幼虫はロシアの宇宙船内で、飛行士の食糧として計画されていたもの。飛行士の便を食べたハエの幼虫を飛行士が食べ…と、食糧のない宇宙でも生きていける完全循環が見込まれていた。そこで、そのハエの幼虫に家畜の糞を食べてもらい、その幼虫をまた家畜に食べてもらおうとするのが、ZOOコンポストのねらいだ。ハエの幼虫は、抗菌性にもすぐれているので、飼料に余計な薬品を加えなくともよい、というメリットもあるのだそう。しかも、通常2ヶ月はかかる堆肥化を、ハエの幼虫に食べさせれば1週間で堆肥化できる。トロプス単体で販売しているほか、農家が簡単に育成できる育床トレイも開発。すでに千葉県成田市で、豚糞を使った実証実験がはじめられているということだった。
企業や地域単位での取り組みが多かったバイオマスだが、最後に家庭でも楽しんで使う方法があることをお伝えしよう。それは、エコロジー・エンタープライズが展示していたペレットストーブ。木質ペレットという、かんなくずや端材を細かくし、圧縮整形したものを燃やして使うストーブだ。筆者も前に燃えているのを見たことがあるが、本当の火がパチパチと燃えていくさまは、見ていて心がなごむ。粒状なのでとても扱いやすいし、100%木なので有害物質も発生しない。換気がきちんとできる部屋ならば、ぜひ取り入れてみたいストーブだ。価格は20〜50万円プラス工事費、ペレットは20kg 500円程度。
今まで産業廃棄物としてお金をかけて捨てていたものが、加工すれば売れるようになるかもしれない、というこのバイオマスという分野。いまだ実証実験段階のものも多いが、コスト感なども含めて使いやすい商品やサービスになると、より効率的なリサイクル社会の実現へとつながりそうだ。