これまでWeb上の情報を共有するには、Wikiなどハイパーテキスト管理システムが一般的だったが、Wiki管理者の運営ポリシーやシステム的な制限により、自由度は決して高くなかった。この問題を打開するために、多種多様なWebアプリケーションがリリースされてきたが、どれも一長一短。開発者やサービス提供者は、いかにして管理システムを意識させることなくデータをクリッピングし、活用できるかを模索している。そのひとつの答えとなるのが、米Microsoftの研究機関Live Labsが試験的にリリースした新サービス『Thumbtack』である。
Webスクラップサービス『Thumbtack』
Thumbtackは、テキストやURL、画像などWeb上に点在する情報をクリッピングし、自分だけのクリップノートを作成するサービスだ。たとえば、家電製品の買い換えを思案している際に、Webから情報収集を行なったとしよう。その際、発見した情報はテキストファイルにURLをメモするか、Webブラウザのブックマーク機能、もしくはURLファイルを任意のフォルダに集めるといった作業が一般的な管理方法だ。場合によっては、ソーシャルブックマークを用いて管理する方法もある。
だが、前述の方法では家人や友人に情報を提供することはできても、共有となると少々難しい。しかし、Thumbtackなら、1ページ内にさまざまな情報をクリッピングし、情報共有を行なう相手もコメントを加えるなどアクションを起こすことが可能。一方向の情報提供ではなく、別メーカーの同種製品を候補に挙げ、機能面で意見を交わし合うなど、多様な情報共有スタイルを構築できるのだ。
ThumbtackはAjaxで書かれおり、Internet Explorer 7もしくはFirefox 3.0を前提としているが、後者はコピー機能やキャンバスビューなど一部の機能が使用できない。また、live.comのアカウントが必要となるため、Internet Explorer 7を用いたほうが、スムーズに使用できる(図1・2)。
操作方法はWindows OS付属の「ワードパッド」に近く、テキストや画像の貼り付けはもちろん、フォントサイズの変更などが可能だ(図3~7)。また、ノート内のコンテンツと連動し、より便利に活用するためのガジェットも用意されている。現時点では4つしかなかったが、FAQによると、今後もガジェットの開発・追加が行なわる予定だ(図8・9)。
図3 テキストはコピー&ペーストで簡単に貼り付けられる。URLも編集中に表示されるツールバーの「Create a link」ボタンでリンク可能 |
図4 変更するテキストを選択した状態でツールバーから項目を選べば、フォントの種類やサイズ、状態(ボールド、イタリック)の変更も行なえる |
図5 テキストを選択した状態で、「Create a list」ボタンをクリックすれば、箇条書きにすることも可能だ |
図6 テキストと同じようにコピー&ペーストすれば、画像も貼り付け可能。また、画像はクリックでリサイズ用のフレームが付加し、ちょうど良いサイズにリサイズできる |
図8 「Thumbtack」には、いくつかのガジェットが用意されており、ページ内のコンテンツと連動できる。AddressGadgetはページ内の住所を自動的に検索し、地図に表示するというものだが、うまく動作しなかった |
図9 こちらはLayoutGadget。ドラッグ&ドロップで移動できる各ノートをレイアウトし、きれいに並べ替えてくる。ちなみに不要になったガジェットは「×」ボタンでクローズできる |
データの収集もInternet Explorer、Firefox共にブックマークレットが用意されているので、クリックひとつでノート作成が可能。ただし、現時点では日本語に対応しておらず、Web上の画像も必ずクリッピングできるとは限らない。このあたりは開発中のサービスなので今後に期待したい(図10・11)。
図10・11 ページ右上にある「Get Thumbtack Bookmarklet」をクリックし、ポップアップページにある使用中のWebブラウザ用ブックマークレットのURLをブックマークに登録。後はクリッピングするWebページを開き、ブックマークを呼び出すだけでノート作成が行なえる |
肝心のデータ共有だが、方法はふたつ。ひとつは「share」ボタンをクリックすると表示されるポップアップページに電子メールアドレスを入力し、ページを送信するというもの。ふたつめは「publish」ボタンをクリックし、コレクション(各ページの集合体)のURLを作成。そのURLを電子メールで送信するか、ブログなどに貼り付ければいい(図12)。
全般的な使い勝手を見る限り、ユーザーインタフェースに関しては及第点に達しているものの、まだまだ未完成な部分もある。もちろん開発中のWebサービスであると同時に、同社が正式な製品版としてリリースしたものではないため、今後のブラッシュアップに期待したい。
(Cactus)