エコプロダクツ2008では、シャープ、京セラをはじめとする太陽光発電システムメーカーが最新の製品を展示している。ここでは、各社製品の特長をはじめ、研究開発中の新技術を紹介する。
シャープは発電電力を直流のまま使うDC家電を参考出品
シャープブースは、太陽電池関連にかなりの面積を割いた展示構成。新提案として、ソーラーパネルで発電した電力を直流(DC)のまま使えるDC家電や、コントロールBOXでCO2排出を年間約276kg削減(ソーラーパネル2枚の場合)するという「DCエコハウス」が参考出展されていた。これは、直流から交流への変換ロスをなくすことで、太陽光発電したグリーン電力の利用効率を向上するというものだ。コントロールBOXは、鉛蓄電池を内蔵する直流/交流のハイブリッド電源システム。昼間はソーラーパネルで発電した電力を蓄えると同時に照明などに使用し、夜間は蓄電池に蓄えた電力を照明に使用、蓄電池容量が少なくなってくると、通常の電線からのAC電源に切り替える。
同ブースではこのほか、壁面に薄膜太陽電池モジュールを、ガラス面に薄膜シースルー太陽電池モジュールを組み込んだビルや家の模型を見ることができる。未来をイメージさせる模型をダイナミックに展示し、太陽電池の進化と可能性をアピールした格好だ。このうち薄膜太陽電池モジュールは、シリコンの厚さが現在量産されている結晶系の約100分の1という省資源で、結晶系よりも高温に強い特性を持つ。同社は、薄膜太陽電池と次世代液晶パネルを製造する新工場「堺コンビナート」を3,800億円を投資して建設中。2010年3月までに稼動を開始し、年間1,000MWの太陽電池を生産する世界最大の太陽電池工場となる予定。量産される薄膜シリコン太陽電池は、ガラス基板の上に形成させる薄膜シリコンを現在の2層から3層構造にすることで、モジュールあたり10%という変換効率を実現するという。
京セラはバックコンタクト太陽電池でセル変換効率18.5%を達成
京セラは、09年度中に量産開始予定の新型太陽電池をメインに展示していた。これは、電極を裏面に配置する「バックコンタクト技術」を採用したもの。従来はパネルの表面にあった電極を裏に回すことで有効発電面積を拡大し、セルあたりの変換効率を18.5%に向上したという。同社は、バックコンタクトセルを中心とした多結晶シリコン太陽電池セルの新たな生産拠点を、滋賀県野洲市に建設予定。2011年度に650MWの生産量を見込んでいる。
また、ユーザビリティの向上を狙ったシミュレーションシステム「フォトパ」の体験ブースも。フォトパとは、自宅の写真1枚で太陽光発電システム設置時の発電量、設置イメージ、費用がわかるというもので、地域の販売拠点「京セラソーラーFC」で商談に活用されている。なお、同社は業界で唯一、販売拠点のフランチャイズ化を推進しており、2008年11月現在57店舗のチェーンを、2010年には100店舗に拡大する方針という。
三菱は低反射ハニカムテクスチャー形成技術でセル効率を向上
シャープ・京セラと比較して小規模な印象ではあったが、三菱電機も新技術によるセルの高効率化をアピールしていた。また、同社のウリである変換効率の高いパワーコンディショナーについても、内部の部品の展示も見られた。同社の新技術は、セル表面のテクスチャーをハチの巣(ハニカム)状に形成することで受光量を増大させたというもの。これにより、18.6%というセル変換効率を実現している。2010年度以降、量産品にこの技術を順次導入していくとのことだ。
三洋は熱に強く変換効率の高い単結晶シリコン
三洋ブースは、eneloopブランドをメインにした展示構成ながら、ソーラーパネルも目立つ位置に置かれていた。同社のパネルの特徴は、素材が単結晶シリコンという点。他社の多結晶シリコンは、この単結晶シリコンを製造する際に出た端材からつくられている。単結晶は、結晶としての純度が高い分価格も約15%ほど高いが、同じ面積のモジュールと比較して約10%発電量が多いとのことだ。また、熱に強いという長所も持つ。ブースでは、単結晶パネルと多結晶パネルの模型に同じように熱を加え、発電量の落ち具合を比較する展示が行われていた。
どのメーカーの太陽光発電システムを選ぶべき?
さて、大手メーカーが発電効率の向上にしのぎを削る中、実際に導入するとなった場合、何を目安に製品選びをすればいいのかが気になるところだ。そこで、以下の表に各社の太陽光発電システムの変換効率を数字で比較した。ただし、算出・表記方法には統一基準がない(※)。また、あくまでも理論値である数値を横並びに比較しても、判断材料としての価値は限定的だ。 ※一般的にセルからモジュールになる際に変換効率は落ちるため、セルで表記された数値とモジュールで表記された数値は比較できない。
というのも、システムはセルの集合体であるモジュールを何枚か組み合わせたパネル部分と、直流を交流に変換するパワーコンディショナーから構成され、どちらの変換効率も発電量を左右する。また、電力はパネルからパワコンに流れる間に若干なりとも放電されるため、実際に設置した時の、パネルとパワコンの物理的な距離も無視できない。さらに、現実的な設置条件を考慮に入れると、限られた屋根面積を最大限に生かしてパネルを配置できるかどうかも発電量に影響する。効率よくパネルを並べるためには、パネルのサイズ・形状が屋根形状に合う製品がよいということになる。以上のようなこと考慮した上で、もっとも創エネ効果を発揮するシステムを選ぶには、やはり複数の販売・施工会社の発電シミュレーションと見積もりを比較検討するのが近道だろう。
メーカー | 太陽電池の種類 | モジュール変換効率 | パワーコンディショナ変換効率 | モジュール品番 | 価格 |
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シャープ | 多結晶シリコン | 14.4% | 94.5%(接続箱・昇圧ユニット内蔵) | ND - 191AV | 7万2,450円 |
京セラ | 多結晶シリコン | 13.7% | 94.5% | RD183X - QP-R | 11万1,510円 |
三菱電機 | 多結晶シリコン | 13.0% | 97.5% | PV - MX185H | 11万4,660円 |
三洋 | 単結晶シリコン | 17.0% | 94.5% | HIP - 200BK1 | 14万3,850円 |
※各社の量産されている家庭用機種のうち、変換効率トップ機種で比較。数値はカタログ、展示パネル、取材、およびカタログ掲載の数値を元に算出した数値。