ヤフーや楽天、日本オンラインドラッグ協会など6社・団体は11日、一般用医薬品の通信販売の継続を求める要望書を、舛添要一厚生労働大臣に提出した。今年9月に公表された厚生労働省の「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」では、一般用医薬品の通信販売が大幅に規制される内容となっており、要望書では、省令案の見直しを求めている。
医薬品のネット販売継続を求める10万人分の署名も提出
厚生労働省の省令案では、2009年春にも施行が予定されている改正薬事法で定める「第1類」「第2類」「第3類」の医薬品に関し、「第1類」「第2類」の医薬品のネット販売を規制する内容となっている。この規定に従うと、解熱鎮痛剤、風邪薬、胃腸薬、水虫薬、妊娠検査薬、漢方薬などのネット販売・通信販売ができなくなる。
舛添厚労相には、楽天 執行役員 渉外部長の関聡司氏と日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏らが要望書を提出。要望書と併せて、楽天がインターネットで集めた、医薬品のネット販売継続を求める10万人分の署名を印刷したものも提出した。
要望書では、「省令案がそのまま確定し実施されることになれば、通信販売で医薬品を購入するのが不可欠な消費者にとっては、その手段が奪われることになる」と説明。
「今回の省令案が利用者にとって非常に重大な影響を及ぼすことは、医薬品のネット販売継続を求める署名がわずか3週間で10万超集まったことや、利用者の手紙などを見れば明らか」と強調。
「このような状況を踏まえ、現状問題なく行われている一般用医薬品の通信販売を継続させることを要望する」と省令案の見直しを求めている。
舛添厚労相は「広く議論をしていくべき」と回答
これに対し舛添厚労相は、「通信販売の利便性は分かるが、安全性への懸念を訴える声もある。要望書で言っていることは分かるので、広く議論をしていくべきだ」と述べた。
要望書提出後、楽天の関氏や日本オンラインドラッグ協会の後藤氏のほか、ヤフーCCO兼法務本部長の別所直哉氏ら8人が参加して、合同記者会見が開かれた。
関氏はまず、省令案が2009年6月1日に施行されれば、一般医薬品の67%が通信販売で購入できなくなると説明。
要望書で継続を求めた「通信販売」について、(1)薬事法の許可を受けた薬局・薬店が行う通信販売であること、(2)扱う医薬品は、通常の薬局・薬店で販売されている、承認を受けた一般用医薬品であること、(3)匿名だから危険と言われることがあるが、通信販売は配布先を登録する必要があるので誰が買ったか分かること、などの点をあらためて強調した。
その上で、「外出が困難な高齢者や障害者、地理的、時間的に薬局・薬店に訪問して購入するのが困難な人など、通信販売で購入するのが不可欠な人達は多い」と述べ、ネット販売を初めとした通信販売の継続の必要性を訴えた。
ヤフーの別所氏は「医薬品販売全体での情報提供の議論必要」と訴え
ヤフーの別所氏は、要望書に添付された「一般用医薬品の情報提供に関する方針案」について説明。
「医薬品を売るのと、家電などを売るのとは根本的に異なる面がある」とし、「対面販売や通信販売といった形式上の違いだけでなく、医薬品に関する情報提供をいかに行っていくかが最も重要」と話した。
その上で、「店舗での販売も含めた、医薬品販売体制全体で最善の情報提供を行うための議論をすべきだ」と強調した。
日本オンラインドラッグ協会の後藤氏は、「医薬品のネット販売は、多くの人にとってすでに生活のインフラになっており、省令案はこれを奪うことになる。また、医薬品のネット販売を行っているのは、地方の中小薬局が多く、省令案はこうした薬局・薬店を見殺しにすることになりかねない」と訴えた。
インターネット先進ユーザーの会理事の中川譲氏は、「インターネットとはそもそも情報共有するためのツール。なぜ薬についての情報提供をインターネットで行えないと考えるのか。昼間薬局に行けない人や、聴覚障害がある人などにとって、医薬品のネット販売は非常に大切なもので、これをできなくすることは"逆・デジタルデバイド"になりかねない」と話した。
省令案は近日中に省令として内容が確定される予定となっており、今回の要望書提出を受け、舛添厚労相がどのような判断をするかが注目される。