弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏は1969年生まれの39歳。野村総研、ボストンコンサルティンググループ、リアルソリューションズ起業を経て、今年4月より現職に就く |
「カタログに書けないような細かい改良を加えた。派手な新機能はない。だが、その進化の大きさは使っていただくと実感していただける」 - 12月5日から発売する「弥生 09 シリーズ」の特徴を、同社 岡本浩一郎社長はこう表現する。「弥生 09 シリーズ」を構成するのは、「弥生会計 09」「弥生販売 09」「弥生給与 09」「やよいの青色申告 09」「やよいの給与計算 09」の5つの製品。各製品に共通しているのは、中小企業、個人企業、起業家を対象に「かんたん・やさしい」を追求している点だ。「弥生 09シリーズ」発売を直前に控えた11月後半、同社 岡本浩一郎社長に、新製品の魅力、同社の事業方針などについて聞いた。
--「弥生 09 シリーズ」の発売前の手応えはいかがですか。
大変良い感触を持っています。ひとつは、製品の完成度という点での手応えです。今回の製品では、「かんたん・やさしい」ということを唱っていますが、使い勝手を進化させたという点では満足のいくものができたと考えています。
実は、ここ数年、新たな機能を搭載することに力を入れすぎ、使い勝手を損なっていたのではないかという反省がありました。店頭での訴求でも、マスコミ向けのアピールでも、新たな機能があるとそれを訴えやすい。ですから、新機能に走る傾向が強かった。だが、よく考えてみると、その機能は本当にお客様にとって必要な機能なのだろうか、かえって使いにくいもの、難しいものにしていないだろうか、という反省があった。私は、今年4月から弥生の社長に就任しましたが、それ以前から弥生を使っているユーザーですから、ここ数年は、どうも難しくなったという印象を持っていました。
今回の新製品では「本当の意味での"かんたん・やさしい"を再定義し、多くの機能を取捨選別した」という岡本社長 |
そこで、「今年は派手な進化ではなく、地道な改善を進めよう」と号令をかけ、改善内容を精査しながら開発したわけです。ただ、その進化は、カタログに書きにくいものばかりで(笑)。たとえば、文字を太くしたり、フォントを変えたりといったことでの見やすさの向上、また、網掛け機能もFAXで送信したときに見えないというお叱りをいただき、網掛けがない形でも印刷できる機能を搭載するといった改善を行った。なかなか訴求しにくい部分ですが、こうした細かな改善を加えていますから、以前から利用していただいているユーザーにとっては、「おっ、使いやすくなったな」と思っていただける"玄人受け"するような(笑)機能強化だといえます。
また、弥生を初めて使う方、これまで会計ソフトを導入したことがないという方にも、スムーズに導入していただけるでしょう。その点では、初心者受けする進化だともいえます。ご要望をいただいた改善点の上位10項目すべてに対応したとはいえませんが、利用者の視点に立っての改善をしたという自信はあります。実は、私は、「今回の製品は、弥生 08 シリーズに比べて、こんなに進化しています」という言い方はしたくないんですよ。
--それはどうしてですか。
たしかに当社は、弥生 07→弥生 08→弥生 09というように、1年に1回、製品を進化させており、それにあわせて機能を強化してきました。しかし、会計ソフトというのは嗜好品とは異なり、必要に迫られて導入するわけです。その必要なタイミングが今年であり、その結果として、弥生 09を購入しているわけです。お客様にとっては、昨年の製品に比べて、今年の製品はこう進化したんだというのはあまり意味がなく、むしろ、今年の製品そのものの良さを知っていただくことのほうが大切なんです。"進化した点はここです"というのは、開発者側/メーカー側の視点であり、お客様の視点に立ったものではないといえます。これはモノづくりの考え方としては、きわめて大切なことではないでしょうか。