NECは、東京都大田区にあるRFIDの検証施設である同社の「RFIDイノベーションセンター」を報道機関に公開するとともに、RFID関連の新製品「アクティブタグ」と「スマートコントローラ」を発表した。
「RFIDイノベーションセンター」は、RFID導入を検討する企業のための事前検証施設。ここには、NECのRFID設備が多数設置されており、ユーザーは自社の商材などを持ち込んで、実環境に近い条件で検証できる。2006年10月-2008年11月間で、製造業や物流業、流通小売業、SI・情報サービス業などを中心に、950社以上が利用しているという。
センター内には、アパレル店舗を想定したコーナーのほか、「ストレッチ包装機 RFIDタグ読み取りシステム」「仕分けコンベア RFIDゲートシステム」「高速ループコンペア RFIDゲートシステム」などが配置され、実証実験が行えるようになっている。
アパレル店舗を想定したコーナー。商品ごとにRFIDが付けられ、入荷検査、POS販売管理、万引き防止、棚卸し業務などが行える |
「UHF帯 RFIDゲート」。フォークリフトや台車で搬送するパレットを一括読み取りする |
NEC ユビキタスソリューション推進本部長 松尾泰樹氏 |
NEC ユビキタスソリューション推進本部長の松尾泰樹氏は、現在のRFIDのマーケティング状況について「ガートナーのHype Cycleによれば、黎明期があり、過剰期待の時期があり、失望の時期があり、徐々に導入が進む成長の時期になるが、RFIDは(現在)失望の時期である」と語り、予想通りに市場拡大は進んでいないが、問題が解決すれば導入が一気に進むという期待も示した。
(注)Hype Cycle(ハイプ・サイクル):テクノロジやアプリケーションの成熟過程と市場に及ぼす影響を分析するため、ガートナーが1995年に考案した手法
松尾氏が指摘した問題とは、コストだ。同氏は「バーコードは印刷すればいいが、RFIDは5円なり10円なりのコストがかかる。洋服の値札は通常2円ほどだが、これをRFIDに変えるとなれば、10円ほどかかってしまう」と具体例を挙げて語った。また、タグを付けるのは上流の業者だが、益を得るのは下流の小売り業であり、コスト負担者と受益者が一致していないという別の問題も指摘した。
ただ、このような状況にあっても、RFIDの導入の進んでいる分野もあるという。
現在RFIDは、電機、自動車、自動車部品といった一部の企業内での利用が多いが、エコ、トレーサビリティ、危機管理などの分野でも、確実に導入が進んでいるという。松尾氏は「最近のソリューションビジネスは成熟し、どのメーカーが提供しても大きな差がなく、価格競争になっている。こういう時代だからこそ、我々は新たな領域にソリューションを拡大していく」と述べる。
そしてこのような市場も見据え新たに投入する製品がアクティブタグだ。アクティブタグはパソコンに接続する親機と管理する物品につける子機で構成され、自発的に電波を発信することによって、約50メートルの距離で双方向通信が可能となっている。温度、湿度、照度、加速度などの各種センサとの連携が可能で、パソコンに接続した親機へ無線で定期的にデータが送られるので、リアルタイムに情報を可視化することできる。加速度とは、子機を付けられた物品がどちらの方向に、どれだけ動いたかを知ることができるものだ。また、異常を検出した場合は、そのタグの警告灯を点灯することも可能だ。アクティブタグは、NECトーキンが開発し、NECがアプリケーションを開発して販売する。
用途例としては、屋内の温度や照度を測定し、電気機器の電力使用量を見える化して省エネに役立てる、倉庫内の温度をリアルタイムでモニターする、作業者が近づくとピッキングしたい荷物が光り、場所を特定しやすくなる、などが考えられている。
また、従来からの課題であった電波干渉を回避する「スマートコントローラ」も今回新たに発表された。
従来、RFIDゲートの複数同時利用や、部品が密集した環境では、電波干渉が発生し、チップを正確に読み取れないという問題があった。そのため、現場でアンテナを調整したり、タグの貼り付け位置を工夫したり、電波吸収ボートを立てたりして対策を立てる必要があった。スマートコントローラは、電波干渉を回避するノウハウをソフトウェア化し、装置内に組み込むことで問題を解決、現地の調整時間を約35%削減するという。スマートコントローラは、NECエンジニアリングが開発し、NECがアプリケーションを開発して販売する。単体価格は180万円からとなっている。