Intelは12月7日(現地時間)、同社研究開発部門「Intel Labs」において、SiをベースとしたAvalanche Photodetector(APD)を開発、同素子で340GHzのGain x Bandwidth(GB:利得帯域幅)積を実現したことを発表した。

今回製作されたAPDのウェハ

素子のサイズをてんとう虫と比較

パッケージ化されたAPD(左)とその拡大画像(右)

APDは、通常のPhotodetector(PD)が、1つの光子の入力に対し1つの電子を出力するのに対し、固体内で発生した電荷が結晶格子を構成する原子に衝突するごとに電離を引き起こすことで電荷を増幅していく様子がさながら「Avalanche(なだれ)」のようであることからつけられたPD。このため、1つの光子の入力によって、通常のPDと比べ10倍~100倍程度の電子を出力することが可能となる。

左が従来のPD、右がAPDによる動作図

これにより、Intelのフォトニクス・テクノロジー・ラボ ディレクターで、IntelのフェローであるMario Paniccia氏は、「通常のPDが10mWのレーザを受光できる距離を1とすると、APDでは同じ距離なら出力を1/10程度に、また同じ出力なら距離を10倍に増やすことができる」と語る。

今回Intelが開発した素子は、従来InPなどの化合物半導体で用いられていたものを、上層の光子を吸収するAbsorption RegionにGeを用い、下層のMultiplication RegionにSiを用いたというものでSiとGeによる歪み技術が用いられている。

IntelのSiベースAPDの構造

SiとGeによる歪み技術

これにより、GB積で従来にInPによるAPDと比べ2倍以上となる340GHzを達成しており、利得を30倍にしても10GHz帯での利用が可能になるという。

GB積の関係(InPのAPDとの比較)

同研究には、Intelのほか、米国防高等研究計画局 (DARPA)が出資、米Numonyxが製造とプロセス技術の面での支援、米バージニア大学のジョー・キャンベル教授と米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・バウワーズ教授がコンサルタントとして参加している。

なお、Intelでは、同研究に関しては、「仮に実用化すれば、現在300ドル程度のAPDを100ドル程度まで下げることを狙える」(同)とするが、まだ研究開発のものとしており、市場への展開などに関しては未定としている。