マイクロソフトは4日、インターネットオークションを通じたWindows製品の海賊版対策を開始すると発表した。ネットオークション最大手のヤフーと協力し、海賊版出品者への対応を強化するとともに、海賊版購入者へのサポートを提供する。
日本国内の海賊版は金額ベースで世界トップクラス
ソフトウェアの海賊版は世界中で問題になっているが、国内ではソフトウェア全体の海賊版の割合としては世界でも6番目に低い数値を見せている。しかし、金額ベースでは世界でも2~3番目に位置しており、大きな課題となっている。
そうした中、マイクロソフトでは正規ソフトウェアイニシアチブ(GSI)として教育・啓発、技術的、法的の3つの柱で海賊版対策を行ってきた。海賊版を利用した際のリスクの教育・啓発や、WGA(Windows Genuine Advantage)のようなアクティベーション導入による技術的対応、法執行機関と連携した摘発などがその取り組みの一例だ。
国内では路上販売による海賊版の流通は減ってきているというが、それに対してネットオークションを悪用した海賊版販売は減っていない。同社の推計ではYahoo!オークション(ヤフオク)だけでも常時3,000点の海賊版Windowsが出品され、延べ7万人程度がそれを購入してきたとされる。
今秋からヤフオクに海賊版を出品する組織的な動き
正規に購入したボックス版のWindows製品をオークションに出品することは問題ないため、海賊版出品者も正規版の画像などを使い、正規のプロダクトキーが付属するという名目で出品。一般消費者がネットオークション上で正規版か海賊版かを判断することは難しく、実際に商品が届いてから海賊版に気づく、といった例も多いという。
以前から海賊版のオークション出品はあり、逮捕者も出ているが、マイクロソフト 法務・政策企画統括本部長で弁護士の伊藤ゆみ子氏によれば、この秋口からヤフオクで組織的な海賊版の出品が確認されたという。これに対して早急な対応が必要と判断。今回の発表に至ったという。
今回の出品では、メーカーPCに付属するリカバリメディアを違法コピーしたものが使われ、コピー自体は中国で行われていた。落札されると落札者の情報が中国に送られ、海賊版を梱包し、住所も貼り付けた状態で国内に発送、その後落札者に郵送される仕組みだった。実際に、税関では大量の海賊版が押収された例も出ている。
海賊版に付属するプロダクトキーは、メーカーPCからプロダクトキーのシールをはぎ取ったものなど、実際のリカバリメディアに対応したプロダクトキーではなかった。そのため、オンラインでのアクティベーションは行えないが、電話によるアクティベーションでの回答を載せたマニュアルも同梱されていたそうだ。
海賊版購入で被害も - MSが相談窓口
海賊版の出品は著作権法違反に当たる犯罪で、出品者は摘発の対象となるが、落札者にとっても、インストールができない、マルウェアが混入している、メーカーやマイクロソフトからのサポートを受けられない、犯罪組織への資金提供につながるといった問題が起こりうる。実際に米国では、海賊版に混入したマルウェアによる被害も出ているという。
そこでマイクロソフトでは、まずだまされて海賊版を購入した消費者の不安を取り除くために、相談窓口を新設。2008年12月4日から2009年1月9日までの間、落札したWindowsが正規品かどうかの電話相談を受け付ける。海賊版の危険性なども伝える。
同時に、ネットオークション利用者への注意喚起を目的に、オークション利用時の注意点と対策をまとめた「著作権保護サイト」を公開する。
出品監視、刑事告訴も
出品者に対しては、ヤフーと連携して海賊版の出品を監視し、ヤフーIDの削除などの対応をとる。出品画面からは判断しにくいようなものでも、両社が協力して対応に当たる。こうした情報については警察当局とも連携し、情報共有を行っていく。今後、ヤフー以外のネットオークション運営者とも同様の協力を行う考えで、すでに話し合いに入っているという。
また、海賊版対策に関連し、米Microsoftは世界14カ国で海賊版業者に対する刑事告訴を近日中に行う。国内でも訴えを起こす予定だ。
ビジネスWindows本部長の中川哲氏は、同社にはネットオークション落札者から「海賊版ではないか」という問い合わせも来ていると話す。今回の対策は「第一義に(海賊版だと)知らずに落札した人の不安を取り除くため」とし、落札者のリスクを抑えるための施策だとした。当初、相談窓口は1カ月程度の開設だが、今後延長も検討する。
今回は海賊版撲滅に向けた「スタートポイント」(伊藤氏)であり、今後ネットオークション運営者や当局とも連携して対策に取り組んでいく考えだ。