SAPジャパンは、業務プロセスを管理するソリューションの新製品「SAP NetWeaver Business Process Management(以下SAP NetWeaver BPM)」を12月18日から提供開始すると発表した。ビジネスプロセスの流れ全体を管理し、現場のニーズをITに組み込み、変化に対し柔軟、迅速に対応できるようにして、業務の効率性向上につなげることを目指す。同社では2009年度で10社以上への納入を見込んでいる。

「SAP NetWeaver BPM」は、機能をモデル化してシステム設計していく「モデル駆動型」の手法を基本としており、業界標準のビジネスプロセスモデリング表記法「BPMN(Business Process Modeling Notation)」を採用している。BPMNは実行言語に依存しないため、一般のビジネスユーザーはITの専門知識がなくても、業務プロセスを設計することができ、業務プロセスの設計から実装までの一貫した連携を実現している。

モデリングの核となるのは、BPMNによるグラフィカルモデリングツールで、Eclipseのプラグインとして提供される。ワークフロー、イベント、タスク、ユーザーインタフェースなどをサポートする。BPMNにより、業務プロセスの実態が把握でき、改善すべき点も明確化されるとともに、ビジネスユーザーもIT部門も同じ環境で業務プロセスを設計・実装することが可能となり、「ビジネス展開までのスピード、柔軟性、品質が改善される」(同社)という。

SOA基盤で利用できるサービスとの連携により、起案や承認などのような、人が行う仕事だけではなく、人同士、システム間、人とシステムのやり取りを迅速に設計・実装、実行することができることも大きな特徴だ。

「SAP NetWeaver BPM」は、統合開発環境である「SAP NetWeaver Composition Environment(以下SAP NetWeaver CE)」のコンポーネントとして提供される。「SAP NetWeaver CE」には、サービスのモデリング・デザイン環境としてデータ型などの定義情報を格納するリポジトリである「SAP NetWeaver Enterprise Service Repository(以下、SAP NetWeaver ESR)」も組み込まれており、SAPアプリケーションの業務部品をサービス化したエンタープライズ・サービスとともに、ユーザー独自のサービスなども直接呼び出し、ビジネスプロセスに連携させることができる。

「SAP NetWeaver BPM」と同時に提供される「SAP NetWeaver Business Rules Management(以下SAP NetWeaver BRM)」は、環境の急激な変化に対応できる「業務プロセス管理」と、決済権限など、社内で規定されたルールに準拠して運用しなければならない「業務ルール管理」を統合的に開発することが可能だ。「SAP NetWeaver BRM」により、「SAP NetWeaver BPM」で設計したビジネスプロセスとビジネスルールを直接連携させることができ、開発生産性や業務への適用の効率性の向上につなげられるという。また、ビジネスプロセス管理とビジネスルール管理を切り離して運用することで、日常的に発生する変化に対し、対応するタイミングをずらし、これら相互の影響を最小化できることも利点だ。

さらに同社は、「Business Process Expert(以下、BPX)育成のためのトレーニングコースおよび認定制度を12月8日から開始し、ユーザーの視点でのビジネスプロセスを定義できるSAP認定コンサルタントの育成を促進する。BPXは、企業固有の状況、要件などを理解したうえで、最適なビジネスプロセスを設計する任務を担う。

BPX育成支援の一環として、SAPのコンサルタント、開発者、システム管理者向けのオンラインコミュニティサイト「SAP Community Network(以下SCN)」の日本語化と日本人向けサービスの提供も開始する。SCNは、SAPの最新技術情報を共有する場として位置づけられ、製品の技術情報や開発ツール、e-ラーニング教材、評価版などが無償で提供される「SAP Developer Network(以下SDN)コミュニティ」や、BPXのスキル向上、教育などの情報が掲載されている「BPXコミュニティ」などが用意されており、現在、登録者数が計130万人を超えており、日本では3万人以上の登録者がいるという。

SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスプロセスプラットフォーム本部長 福田譲氏

SAPジャパンのバイスプレジデント ビジネスプロセスプラットフォーム本部長 福田譲氏は「手組みのソフトからパッケージソフトまでがサービス化、SOA化され、SaaSの利用も進んでいるが、SAPとしては、部分的な取り組みではなく、必要になる要素を網羅的に扱うことにフォーカスする。アプリケーションやサービスだけでなく、それらをプラットフォームと融合させる」と話す。このような融合化により、SOA、SaaSなど「システムの違いを、エンドユーザーが意識しないで、快適に機能を利用できる環境をつくる」ことを図っている。