クリーンで無尽蔵なエネルギーを電気に変える太陽光発電システム。国の補助金制度復活が決まり、ここにきて注目度が高まっているが、設置には平均で1kWあたり70万円の費用がかかる。国の補助金は約1割にあたる7万円/kWhと見られており、気軽に導入するにはまだ高額な機器だ。環境意識だけで、すんなり購入できるものではないだろう。また、購入・設置方法などについて、不透明な面もある。そこでこの企画では、経済性を含めたメリットや失敗しない購入方法を前後編で解説していく。前編は、設置コストと発電量のデータを中心に、期待できるメリットの”ホントのトコロ”をお伝えしよう。

意外と知らない!? 太陽光発電システムのしくみ

一般的な住宅用の太陽光発電システムとは、シリコン半導体を利用した太陽電池パネルを屋根に搭載、光を受けて直流電気を発生させ、パワーコンディショナという装置で家庭で使える交流電気に変えるしくみ。雨の日や夜間は発電できず、曇りでも発電量が落ちるが、そのときは従来どおり、電力会社の電気を使う。逆に、太陽光で発電した電気が家庭の消費量を上回ったときは、その分が電力会社の系統に流れ、電気代と同じ料金で買い取ってもらえる。蓄電はできないが、発電した分はすべて無駄にならないというものだ。

電力フロー例(2007年4月~2008年1月における気候区1の電力フロー※1)

発電量は「日射条件」「システムの量と質」で決まる

太陽電池の発電量は、「日射条件」「システムの量と質」で決まる。日射条件については、日射気候区別に集計されたデータがある(下図※1)。これによると、1kWあたりの年間発電量は、日射気候区1が917kWh、2が1027kWh、3が1061kWh、4が1107kWh。1kWあたりおよそ1000kWh前後だ。※1出典:新エネルギー財団 「07年 住宅用太陽光発電システム価格及び発電電力量等について」

日射気候区 出典:気象庁

次に「システムの量と質」だが、一般に太陽電池は「3~4kW程度のシステムを設置するケースが多い」(シャープ広報室)。必要な屋根面積は、3.06kWで約23.6平方メートル、3.82kWで約27.1平方メートル(架台を含む、同社カタログより)。屋根面積が小さくなるほど、搭載できる太陽電池の量も減るわけだが、最近では「小さな屋根や寄棟屋根にも効率よく搭載できるようパネルの形状が工夫されているほか、電池自体の発電効率も上がっている」(同広報室)とのことだ。発電効率の高い商品を選び、限られた屋根面積を生かす設計をすれば、狭い屋根でも発電量を高めることが可能というわけだ。なお、設置に最も適する方角は南面で、西、東面になると、南面の85%に日射量が落ちるとされている。 シャープなどのメーカー公式サイトでは、所在地を入力すると発電量をシミュレーションできるので、検討材料にするのもいいだろう。

シャープ製住宅用多結晶太陽電池モジュール2008年度モデル。上段左から 寄棟屋根用<ND-061LV><ND-114CV><ND-061RV>下段左から 切妻・陸屋根用<ND-191AV><ND-160AV><ND-114CV>

コストは平均69.6万円/kWh 新築時と既築で金額に開き

続いて、初期投資の費用相場を押さえておこう。導入に要する費用は、機器代・工事費を含めて1kWあたり69.6万円(※1)。およそ70万円だ。3kWで210万円、4kWで280万円。ただし、新築時に搭載するのと既築住宅に搭載するのとでは異なり、新築では1kWあたり57.1万円、既築では同74.1万円と17万円の開きがある。4kWのシステムを既築住宅に導入する場合、約300万円という費用がかかることになる。

これに対して、2009年度から復活する国の補助金以外に、例えば東京都では2009年度から1kWあたり10万円の補助金を出す。国と都の制度をフル活用すると、4kWシステムで約70万円の補助金を得ることが可能だ。東京都ほど高額ではないが、ほかにも補助金を出す自治体は少なくないので、検討の際には居住する都道府県や市町村の制度をしっかりチェックしてほしい。

次ページでは、以上の情報を材料に設置メリットを考察してみたい。