Flashアニメ『CATMAN』の青池良輔監督が、DVD発売を記念したイベントに登場した。イベントには、青池監督の友人で、Flashアニメ『秘密結社 鷹の爪』などで知られるFROGMAN監督がゲストとして参加し、トークショーを行った。
DVD『CATMAN』や、『ペレストロイカ』が発売中の青池良輔監督(左)。青池監督のインタビューはこちら。 |
人気Flashアニメクリエイターとなった両者は、どうして、"Flashアニメーション"を制作するようになったのだろうか。
FROGMAN 監督によると、Flashアニメが一般的になったのは、ここ3年ほどの間のことだという。両者は、世間がFlashアニメというものを認知していなかった時期からFlashを使った作品制作を始めていた。青池監督は、「確定申告の際に職業欄に『クリエイター』と書くと、生活保護の書類を毎回渡された」というエピソードを披露。FROGMAN監督は「仕事の報酬として、現金でなくチャーシューなどの食料をもらった」ことや、「お祭りの時に、屋台に混じって、1枚500円で似顔絵を書いたりもしていた」というブレイク前の驚きのエピソードを語った。
またFROGMAN監督の「お祭りで似顔絵を描いた」という発言を受けて、青池監督が「短いアニメを作って、紙芝居のおじさんみたいに近所の漁港に行って、子供に『今日は何を持ってきたの? イワシだったら最初の30秒だけしか見せられないな』とか、そういう制作体制が理想なんですけどね(笑)」と話した。ゆったりとした時間のなかで、作品作りをしたいという願望が青池監督にはあるようだ。
イメージトレーニングだけで「Photoshop」をマスター
両監督は運命を変えた『パソコン』との出会いについてのエピソードも披露してくれた。まずは海外在住の青池監督らしいエピソード。
青池「今、家のMacはかっこいいMacなんですけど、当時は高くて買えないから、パソコンの本だけ持っていました。それで、イマジネーションを膨らまして『あっ、ここでファイルオープンで白いのが開いて、解像度を設定して、写真を取り込んで、フィルタの順番とか考えて、おおできた』っていうのを家のベッドの上でやってました(笑)。これを半年くらいやっていればPhotoshopとか覚えられますよ。それで、コピー屋にあるレンタルコンピュータで、実際に作業してみるんですけど、今住んでいるところがカナダのモントリオールだからフランス語版だったんです。でも、『もうメニューの順番は覚えてるから大丈夫』とか言いいながらいじってましたね(笑)」
続いてFROGMAN監督が「ジャスコでパソコンを買った」というエピソードを披露。
FROGMAN「家の近くに、ちっちゃいジャスコがあるんです。飯を買いにいったとき、ちょうどレジのとなりに家電売場があって、そこにパソコンが置いてあったんです。そこに『現品限り8万円』って書いてあって、当時新品のパソコンは20万くらいすると思っていたので、思い切って買っちゃいました。そしたら凄い型の古いパソコンで、OSがWindows XPが出てる時代なのにWindows Meだったんです。それでも当時持っていた古いノートパソコンよりスペックが上だったので、凄く感動しました」
個人制作を始めたきっかけとは
ふたりはどんなきっかけで、個人で映像を作ろうと思ったのだろう。
青池「真面目に会社で働きながらも、自分のやりたいネタとかあるわけじゃないですか。"これは55歳くらいで映像化できるのかな"とか、人生設計をしている時に、たまたま『Director』というソフトに出会ったんです。"これを使って凄い企画書が作れる"と思ったのですが、いざ使ってみたら絵が動いて、音も付けられたので、"これでアニメも作れる"と思いました。実写作品ではないにしても、自分の温めていたネタを映像化できると思いましたね」
実写作品を作りたかった青池監督にとって、Flashアニメの道に進んだのは、本当に偶然だったようだ。またFROGMAN監督は、Flashアニメーションを始める前の約10年間、ドラマや、映画の制作に携わってきたことを語り、そこで生まれた「映像作品を作ること」への自信を覗かせた。
FROGMAN「インターネットドラマは当時、一般の人にあまり普及していなかったんです。シナリオライターでもないような人がシナリオを書いて、役者でもないような人が演じて、カメラマンでもないような人がカメラ撮ってるような作品ばかりでした。だから『俺がやったらもっと凄い作品が作れる』と思いました。最初は実写を撮ろうと思っていたんですけど、結局人が集まらなかったんで、一人で映像作るしかないなと。Flashならソフトとパソコンがあれば作品が作れると思いFlashでの作品作りを始めました」
ふたりとも自分のアイディアを、どうしたら映像化できるか考えていた時に、たまたま出会ったものがFlashだったという。また、両者の発言で一番本音に近いと思えたのは、青池監督の「どちらかといえばふたりともFlashに触って、そこにクリエイティビティの方向見つけてというよりは、『何か生活するのに良い方法はないかな?』と探して、『Flashなら元手が少なくて食えるかもしれない』といった感じだったんです」という言葉だった。