総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の会合が26日開かれ、最終とりまとめ案を公表した。大手ISPから個人のサイト管理者までが協力して違法・有害対策に参画できる「『e-ネットづくり! 』宣言」(仮称)プロジェクトや、教職員の情報モラル教育向上のための強化策など、多方面からの対策が盛り込まれている。

小規模なISPや個人のサイト運営者

民間における違法・有害情報対策では、今春、携帯電話インターネットコンテンツの審査を行う第三者機関「モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)」、子どもにとって「安心、安全」なサイトを認定する第三者機関「インターネット・コンテンツ審査監視機構(I-ROI)」が相次いで設立された。また、大手ISPが所属する業界団体では違法・有害情報対策のためのガイドラインを作成するなどの自主的取り組みが進められている。

しかし、小規模なISPや個人のサイト運営者はこうした動きから取り残されやすく、業界団体にとどまらず幅広いプレイヤーが参加できる自主的取組をどう推進していくかが課題となっていた。

最終とりまとめ案に盛り込まれた「『e-ネットづくり! 』宣言」プロジェクトは、大手ISPから個人のサイト管理者までが協働して対策に取り組むための枠組み。2005年4月から始まった地球温暖化防止のための国民運動「チーム・マイナス6%」をイメージして構想されており、「2009年度中の実施を目指す」としている。

具体的には目標として共有すべき理念を「自主憲章」に示し、これに賛同する法人、個人などが「e-ネットづくり! 」宣言をする。インターネット利用環境整備に積極的に取り組む意欲のあるプレイヤーを"可視化"することで対策を実質的に強化できるとした。

宣言をした企業などは「ガイドライン」や「オペレーションマニュアル」、さらには、顧客対応におけるトラブルや裁判例などを系統的に整理した「事例集」などを共有。「相談センター」「違法・有害情報通報受付」なども設ける。

情報モラル指導力のある教員に「証明書」も

インタ―ネット利用者のリテラシーを向上させる施策の必要性も強調されている。特に出会い系サイトや学校裏サイトなどを通じて、子どもが被害者や加害者となる事案が増加しつつあることから、子どもがネット上の情報を適切に読み解き、危険を回避できるように安全教育を充実させることが必要であるとした。

具体的な方策としては、現状は必ずしも十分な水準とはいえない教員のICT活用指導力や、情報モラルの指導力を強化するため、一定のスキルを獲得した教員に証明書を発行し、企業研修への参加を公務あるいは出張扱いとすることも検討されている。

また、大学生は子どもに近い視点と最新の情報サービスに関する知識を持っているとして、これを生かし、情報モラル向上に関するボランティア活動や出張講座を教職課程に組み込むことによって、単位認定の対象にすることも提案された。

「専門家にとどまらない理解促進」が大きな課題

最終とりまとめ案ではこのほか、普段から一定の自主的取り組みをしているISPなどについて、結果として違法性の判断を誤って削除した場合は、通常より責任制限の範囲を縮小するといった自主的取り組みへのインセンティブを与える方策を提案。

また、コンテンツ・レイティングの普及促進、自主的取り組みを促進する法制、国際連携推進のための枠組構築など、幅広いテーマについて多数の方策が盛り込まれた。

だが、150ページに及ぶ最終とりまとめ案に対し、ある委員は「ふつうの人がこれを読むかというと読まないのでは。概要など何らかの分かりやすいものを用意してほしい」と事務局に要望。

また、別の委員からは「法律関係と技術関係の人間がいる。もう少し(皆が分かるよう)用語をわかりやすく解説してほしい」と意見もあった。

「専門性が高い内容も含まれる違法・有害情報対策を、どのようにして国民に身近な問題としてとらえてもらうことができるか」といった課題が浮き彫りになった形だ。

今回の最終とりまとめ案は、青少年ネット規制法の成立を受け、今年7月総務大臣が策定を発表した「安心ネットづくり」促進プログラムの骨子に位置づけられるもの。

これまでの違法・有害情報対策を整理した上で、今後の対策の方向性を明らかにすることを目指しており、「安心を実現する基本的枠組の整備」「民間の自主的取組促進」「親子のICTメディアリテラシー」の3つが大きな柱。同法の施行状況について検討が行われる2011年度までに講じるべき施策を提言している。

最終とりまとめ案は、総務省のウェブ上で公開されており、12月17日までパブリックコメントを受け付ける。ここでの意見も踏まえ、12月下旬開催の次回検討会で最終とりまとめを行う予定。