Intelのデジタルエンタープライズ事業本部 副社長兼エンベデッド&コミュニケーションズ事業部長であるDouglas L. Davis氏 |
Intelは11月21日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜において開催されていた「Embedded Technology 2008/組込み総合技術展」において、「エンベデッド・コンピューティングの将来」と題した招待講演と記者説明会を行った。
メインフレームから始まったインターネットへの接続環境は、サーバ/PC、携帯電話とその適用範囲を広げ、現在ではノートPC、デスクトップPC、携帯電話の3種類だけでも50億の端末が接続されているという。同社のデジタルエンタープライズ事業本部 副社長兼エンベデッド&コミュニケーションズ事業部長であるDouglas L. Davis氏は、「組込機器がインターネットに接続することで、2015年までには150億台の機器がインターネットに接続することとなる」とし、インターネットに4番目の波が到来するとした。
ただし、それを実現するためには以下の6つの課題があるとする。
- 信頼性と長期寿命
- ソフトウェア・スケーラビリティ
- 低消費電力と低コスト
- プライバシーおよびデータ保護
- IPv4アドレッシング
- オープン・スタンダード
これらの内、上位3つについては「Intelが提供するソリューションで対応が可能」(同)としながらも、下位3つについては、組み込み業界全体で一丸となって活動を行う必要があるとした。
このIntelの提供するソリューションとは、ハイエンド向けのXeonから、低消費電力機器向けのAtomまで幅広い製品ラインナップとそれに付随するエコシステムとツール群を指す。また、特定分野向けのSoCの展開も開始しており、AtomとSoCにより、「低消費電力および低コスト向けの分野でIntel Architecture(IA)の適用が可能となった。これにより、これまで組み込み分野の業績は過去6年間でCAGR18%の伸びを達成してきたが、さらなる伸びを狙う」(同)とする。
2008年4月に発表されたAtomは、発表以降すでに800以上の組み込み製品のデザインが進められており、その中には今までIAが入っていけなかった車載インフォテインメント(IVI)やハンドヘルド端末、自動耕作機器、ミシンといった分野も含まれているという。
講演では、Atomの活用事例として、小売業界でのデジタルサイネージの活用や、ショッピングカートにディスプレイやICリーダなどを備え付けた「インテリジェント・メディア・カート」、パチスロなどのアミューズメント機器などを紹介していた。
また、2009年の第1四半期には当初の予定通り、組込機器向けパッケージとして「Embedded Menlow XL」(コードネーム)を投入する。これはボールピッチ1.0mmのFCBGAとすることで(現行は0.6mmピッチ)、産業温度である-40℃~+85℃の範囲に対応しようというもの。
Atomの方向性としては、組込機器として重要視される4つのセグメント、"性能""発熱""大きさ""コスト"に対して、「幅広い分野で使用してもらうことを考えているが、現状の製品ラインナップは必ずしもすべての分野で使ってもらえるとは思っていない。今後はより低消費電力、低コストの製品の開発を進める」(同)とした。
低消費電力が特に求められると思われる携帯機器への展開については、同社ではMobility Group内のUltra Mobility Group(UMG)で担当しており、そちらの方面に対する取り組みに関しては「担当ではないので分からない」(同)とした。
なお、同社では、急速に拡大した組み込み市場でのAtomのカスタマに対し、「現状、約1,000社のカスタマが存在しており、サポートを早急に進める必要がある」(同)としており、2009年春をめどにオンラインでのサポートを行う「エンベデッド・デザイン・センター」を立ち上げることを予定している。
同センターでは、「パフォーマンスのアナウンスやリファレンスデザイン、ツールの活用方法などを提供するほか、エンジニア同士が情報交換を行う場の提供なども行っていく」(同)としており、幅広い情報を提供することで、カスタマサポートの充実を図っていくとした。