米半導体ベンチャーのQuantenna Communicationsは11月20日、IEEE802.11n対応チップセットファミリ「Quantenna High Speed(QHS)」3製品を発表した。

「QHS600」の写真

3製品は、最大200Mbpsのデータ転送速度と最大450Mbpsの接続速度を持ちシングルの4×4 MIMOもしくはデュアルの2×2 MIMOに対応する2.4GHz品「QHS450」、最大400Mbpsのデータ転送速度と最大600Mbpsの接続速度を持ちシングルの4×4 MIMOもしくはデュアルの2×2 MIMOに対応する5GHz品「QHS600」、最大600Mbpsのデータ転送速度と最大1Gbpsの接続速度を持ちデュアルの4×4 MIMOもしくはクワッドの2×2 MIMOに対応し、コンカレント・デュアルバンドの「QHS1000」となっている。

QHSファミリのラインナップ(QHS1000はQHS450とQHS600を並べて使用する形となる)

なお、QHS1000はQHS450とQHS600をICC(Inter-Chip Communication)で接続し、ソフトウェア管理により5GHz帯と2.4GHz帯とを区別する仕様となっている。

QHS1000のアーキテクチャ

Quantenna Communicationsの会長兼CEOであるBehrooz Rezvani氏

Quantennaのファウンダで会長兼CEOのBehrooz Rezvani氏は、「家庭の中で高速な通信を実現するためには距離や壁により減衰やデッドスポットが発生する問題や、建物が密集した地域での過度な干渉などの課題が存在している。こうした課題に対し、マルチバンドのアクセスポイントやルータで対応するか、伝送品質を高める"Txビームフォーミング"による対応が考えられるが、システムが大きかったり、160ドル以上したりと負担が大きい」とし、各部屋にコンセント直付けタイプのアクセスポイントを実現したリファレンス・デザイン・キット(RDK/SDK)を用意することで、メッシュネットワークを家庭内で築くソリューション「Advanced MIMO Mesh Networking」を提唱するとした。

家庭内ではさまざまな要因により減衰やデッドスポットなどが発生する

このアクセスポイント1つ1つが基地局的な役割をすることにより、壁などの障害物があっても、それを迂回して常に100Mbpsの転送速度を実現できるようになるという。

「Advanced MIMO Mesh Networking」により、ほぼすべての家庭で100Mbpsを実現できるようになるという

そのため、主なターゲット市場を「家庭内ネットワーク機器」としておりアクセスポイントのほか、ホームゲートウェイやSTB、プリンタ、FPD-TVなどでの適用を目指す。また、エンタープライズ市場での適用も考えており、1Gbps対応を武器に、企業内のハイエンドルータやメッシュプラグなどのネットワーク機器への適用も目指すという。

ソリューションとして、"4×4 MIMO+STBC(時空間ブロック符号)"、"Txビームフォーミング"、"メッシュネットワーキング"、"コンカレント・デュアルバンド"の4つの技術に対応。これにより、ほぼ常時安定稼働する高速帯域幅を事業者に提供できるようになったとしている。

4つの技術を搭載することで、ほぼ常時安定稼働する高速帯域幅を実現できる

なお、プロセスは90nmを採用しており、製造はTaiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)が担当。2008年12月よりサンプル出荷を開始する予定としており、日本でもバッファローがコメントを寄せるなど、すでに複数のメーカーが興味を抱いているという。

RDKの概要

実際のRDKの画像(四隅にある白いのがアンテナとのこと。ちなみにチップセットのサイズは18mm×27mm)

また、PCへの搭載に関しては、現状考えていないとのことだが、将来的にプロセスの微細化により小型化が進んだ際には検討したいとしている。