Google Inc.エンタープライズ部門製品企画担当ディレクター マシュー・グロツバック氏

12日に開催された「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」では、「Googleエンタープライズ製品の現在と未来」と題して、Google Inc.エンタープライズ部門製品企画担当ディレクターであるマシュー・グロツバック氏の基調講演が行われた。

グロツバック氏は、Googleは常にイノベーションを続けていると強調する。創業以来様々な新サービスを発表してきたGoogleだが、そのイノベーションは終わったわけではなく、今後も続けられるという。

Googleでは2002年に企業向けの検索アプライアンスを発表しているが、エンタープライズビジネスの本格的な開始点と位置づけられているのは2004年のGmail誕生だという。 「GmailはAjaxアプリケーションとして初めてリッチエクスペリエンスをブラウザの中で実現しました。また、Gmailはクラウドの力を最初に示したものでもあります。当時、他のサービスの提供するユーザースペースが100MB程度だったのに対して、GBの余裕を提供したことが注目されました」とグロツバック氏は語る。

現在、Googleは検索、地理情報、アプリケーションの3つの分野に注力している。エンタープライズ検索の分野では、登場時からすでに良質の検索結果とインストールやメンテナンスが不要なシンプルさというメリットを持っていたが、今後はさらに検索結果の質を向上させることに力を入れたいとしている。「今後は検索機能を拡大し、本当の意味でのユニバーサル検索を実現したいと考えています。企業の中で展開し、どのような形式の情報でも見つけられるようにしなければなりません」とグロツバック氏は語る。

また、地理情報に関しては、既存のコンテンツに地理情報を付加することで新たな価値を創造することができるとしている。地理情報をGoogleのサービスを利用して取得すれば、企業は新たな投資をすることなく地理情報を利用できるというのがGoogleの提供する価値だ。アプリケーションは「Google Apps」として展開されており、特にユーザー同士のコミュニケーションとコラボレーションを効果的に行えるツールが提供されている。 「よく質問されるのは、次に何が来るのかということですが、新しいフィーチャーや能力の提供は3つの領域全てで続けて行き、アプリケーションについても追求していきます」とグロツバック氏は語った。

最新の機能を、グロツバック氏はGoogleのイントラネットポータル「imona」を利用して紹介した。企業はGoogleのエンジンを利用することで、迅速な社内のメンバー検索や、オフィス所在地の地図表示等を簡単に実現することができる。情報の検索においては、検索結果の表示をユーザー属性に合わせて制限することも可能だ。また、他ユーザーに向けた情報を登録したり、その情報を評価することも簡単にできる。

Google Appsの中からは、GmailとGoogleドキュメントが紹介された。マイクロソフトをはじめとする同種アプリケーションの代用サービスだと考えられることが多い両サービスだが、実際には独自の機能を多く持っている。 「たとえば、GmailにはガジェットとしてGoogleトークが配置されていて、アプリケーションを切り替えずにIMを利用できます。iGoogleやポータルにあるガジェットを取込むこともできるため、単なるメーラーではなくマイポータルとして利用することもできます」とグロツバック氏は語る。 特徴的な機能としては、GmailやGoogleトークで利用できる自動翻訳機能が紹介された。特にGoogleトークの自動翻訳機能は、翻訳エージェントを会話のメンバーとして参加させることでリアルタイムに発言が翻訳される様子を見ることができた。簡単な会話やメールの事務的な文章は問題なく翻訳されており、現在は36カ国の言語に対応しているという。Googleトークにはビデオチャット機能もこの日に追加されており、スムーズなビデオチャットの様子も紹介された。

Googleトークでの自動翻訳

また、Googleドキュメントではインターネットと接続して情報を取得できることのメリットとして、スプレッドシートの機能が紹介された。Excel等では「japan」、「china」と入力された2つのセルを選択してフィルハンドルをドラッグすると2つの単語を順に繰り返し入力することができる。Googleドキュメントでは同様の操作の他に、2つの国名をキーにしてアジア太平洋地域の国名を自動入力することができる。独自関数で各国の首都や人口といった情報を簡単に自動取得することができる様子も紹介された。

Googleドキュメントの独自機能

「ユーザーがクラウドから様々なソースの情報を引き出し、リアルタイムシステムで構築することができれば、情報はきちんとアップデートされます。表示を更新すればリアルタイムな情報を取得することができるのです」とグロツバック氏はGoogleドキュメントの優位性をアピールした。 「クラウドアプリケーションがシンプルだからといって、強力ではないということにはなりません。テクノロジーの興味深いイノベーションは今後クラウドで実現されると考えています。新しいタイプのアプリケーションへの移行を牽引するのはユーザーの要求です。コンシューマの世界のテクノロジに対してビジネスの世界は遅れをとっていますが、ユーザーがビジネスの世界にも持ち込んで行くでしょう。従来のパワーユーザーという概念はなくなり、パワーコラボレーターという概念が生まれると考えています」とグロツバック氏は今後の展開を語った。