2008年9月のネット事件簿は詐欺、犯行予告から流出まで様々な事件が入り乱れた混戦模様。犯行予告の"その後"や、ワンクリック詐欺への注意喚起記事も読んで、ぜひネット事件に巻き込まれないよう注意したいところだ。こうした中で断トツ1位となったのは公開を直前に控えたハリウッド映画のWinny流出事件だ。
2008年9月のネット事件簿 Top10(※)
順位 | 記事 | 掲載日 |
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1位 | 映画「ウォンテッド」のWinny流出で有名字幕職人を逮捕 - 京都府警 | 9/18 |
2位 | 県議の「居眠り写真」ブログ掲載がきっかけ、茨城県議会が傍聴規制強化 | 9/4 |
3位 | 「ショタのDVD売ります」、児童ポルノ販売で高校生を書類送検 - 宮城県警 | 9/3 |
4位 | 【レポート】ネットで殺人予告、その後どうなる? - 平井堅コンサート妨害の場合 | 9/17 |
5位 | "池袋駅のナンパ男"にイライラして殺害予告した36歳の女逮捕 - 警視庁 | 9/25 |
6位 | ネットオークション詐欺計画の高校生3人逮捕、住民票も偽造 - 北海道警 | 9/17 |
7位 | 1人のタレントの死で再燃する、悪意のコメント"アクプル"問題 - 韓国 | 9/10 |
8位 | ワンクリック詐欺にご注意を! - 相談件数急増でIPAが注意喚起 | 9/9 |
9位 | 【レポート】容疑者の父は民主党州議員 - ペイリン氏メール流出事件で米国らしい疑惑も | 9/26 |
10位 | ヤフオクに"生きたブラックバス"はダメ - 環境省が削除要請 | 9/12 |
※ 各記事の掲載日(9/1~9/30)から1週間のアクセス数をもとにしています。
災い転じてヒットとなる? 公開直前にネット流出逮捕劇
今回最も注目を集めたのは、映画作品のネット流出事件。流出したのが公開を直前に控えたハリウッド映画、さらにWinny絡みで京都府警が動いたとあって、とにかくフックが多い上にタイミングが良すぎ。これまでのネット事件簿ランキングの中でも飛び抜けて多くのアクセスを集めた。
この事件で字幕を付けて放流された映画「ウォンテッド」は、米国で2008年6月に公開されたアクション映画。主演は、英国出身の俳優ジェームズ・マカヴォイと、解説するのも野暮なハリウッドトップ女優のアンジェリーナ・ジョリー。監督は「ナイト・ウォッチ」(2004年・ロシア)で成功を収めたティムール・ベクマンベトフで、今回が初のハリウッド進出。CGを駆使して見せつける派手なガンアクションが強烈なインパクトを与える作品だ。
今回の逮捕のきっかけとなったのは、日本国際映画著作権協会のメンバー企業であるユニバーサル・シティ・スタジオズが京都府警に告訴したこと。公開前の作品を流出させたことで摘発された事例は今回が初めてだというが、これまでも同じ人物によって「映画27タイトルが字幕を付けて流出されて」いながら、このタイミングで逮捕となったのはなぜなのだろう。このニュースが18日だから、事情はどうあれ20日公開の作品にとっては願ってもない宣伝効果になったことは確実だ。
その甲斐あってか(?)同作品の20日・21日の観客動員数は「20世紀少年」や「崖の上のポニョ」を抜いて1位。その後、興行収入は公開から19日目で20億円を超えるヒットに、また全米では1億3,432万ドル、全世界では3億ドルを突破。日本以外でも世界27カ国でNo.1ヒットを記録したというから、いろいろあったとはいえ作品の実力が大きかったのだろう。
ところで、逮捕された仙台市に住む33歳の男。"職業不詳"となっているが、他の媒体では"無職"と報じているところもあった。男はこれまでも同様の犯行を繰り返していた可能性が高いとされているが、数多くの映画に字幕を付けるだけの語学力を持ちながら、それを活かす場がこの犯罪行為だけだったのなら、なんとももったいない話だ。
タイミングが悪いと言い訳に聞こえる、「もともと原則禁止」
今回のランキング2位は、茨城県が傍聴規則を改正した話題。通常なら1位に入るほどのアクセスを集めたが、今回は"字幕神"のニュースに押された形だ。
県議会傍聴の際の写真撮影について、もともとは「議長の許可が必要」となっていたところを、報道関係者か「公益的見地から必要と認められる者」に対してのみ許可すると規則が改正されたという内容。
事の発端は議会を傍聴した男性が自分のブログに議員の「居眠り写真」を掲載したこと。そして「これを見た一部県議から意見があり、今回の傍聴規則改正につながった」という展開に。さらに「議長が必要と認める場合は、傍聴希望者に対し必要に応じ身分証明書の提示を求めることができる」とした。これでは写真を撮られたらマズいから、という短絡的な理由による言論規制と受け止められても仕方がない。
その後の県側の解説では、撮影・録音は以前から原則禁止となっており、今回の改正では"報道関係者か「公益的見地から必要と認められる者」"に対して許可制で撮影を認めるというルールを改めて徹底することが目的だとしている。また身分証明書の提示については、セキュリティ確保のために言動・挙動不審者に対して住所・氏名を確認する場合があると説明している。
茨城県は撮影・録音の規制について、「一部分だけを取り上げて全体を類推されてしまう」など「正確性に欠ける等のマイナスが生ずるおそれがある」ことを理由に挙げている。しかし、正確でないから規制するというのも不思議な話だ。都合の悪い事を全て「正確でない」として隠すのは極端だとしても、外部に公開される情報が偏ったものでないと簡単に信じることはできない。
今回の件について言えば、もともと原則禁止である写真撮影が無許可で行われ、「一部分だけを取り上げて」批判された形になるわけだが、県民の視点から見ればひとつの"事実"。県側が言う「公開の原則を狭めたり、傍聴を制限したりするものでは一切ない」というのが言い訳に思えてしまうのは、単にタイミングが悪かったということなのだろうか。
ちなみに東京都では、撮影は許可制で申請を出せばOK、神奈川県は傍聴の際に住所・氏名の記入が必要で、カメラ・録音機材は持ち込みは禁止となっており、自治体により対応には多少の差があるようだ。