次期米大統領に選出されたバラク・オバマ氏の移行プロジェクト「Obama-Biden Transition Project」が6日 (米国時間)に「Change.gov」を開設した。オバマ政権誕生への移行プロセスを国民に対して透明に遂行するのを目的としている。ブログぺージの最初の書き込みにシカゴでの演説のYouTube映像が組み込まれているなど、ソーシャルメディアを積極的に活用して予備選と大統領選を勝ち抜いてきたオバマ氏らしいサイトになっている。
Change.govでは、オバマ氏とジョー・バイデン次期副大統領の経歴、移行プロセスの説明、政権の構成、アジェンダなど豊富な情報が提供されている。現在最も充実しているのはアジェンダ・ページだ。外交、経済、教育、テクノロジーなど25項目について現状の問題点と、それらに対するオバマ-バイデン・チームの計画が分かりやすく記されている。Change.govの表紙ページには「Open Government (開かれた政府)」とあり、さらに「移行プロセスは、政府の再定義に、あなたも参加できるチャンスになる」と記されている通り、アジェンダ・ページなどから訪問者が直接アイディアや意見を投稿できる仕組みが設けられている。
国民と共に"Change"を実行しようという姿勢はテクノロジーのアジェンダに最もよく現れている。「ブッシュ政権は米国の歴史の中で、秘密主義で閉ざされた政権の一つだった。政界へのロビー活動に巨額の資金が流れ込む仕組みが政府と産業界の間を回転ドアのように回り、米国の歩みを足止めしていた」と痛烈に批判。オバマ政権では「政府の改革、連邦政府と国民の間の情報交換の実現のために積極的にテクノロジーを活用していく」と宣言している。そのためにオバマ氏は米政府初のチーフテクノロジーオフィサー (CTO) を任命する。「政府とエージェンシーが21世紀に適したインフラストラクチャ、ポリシー、サービスを持てるように指揮を執るのがCTOの役目だ。各エージェンシーのCTOやCIO (チーフインフォメーションオフィサー) と連携し、最良のテクノロジーを用いてエージェンシー間を安全かつ効率的に結びつける」という。テクノロジー政策プランでは、ネットの中立性やインターネットのオープンな競争の維持、コミュニケーション・インフラの改善、R&Dやサイエンス教育への投資、中小ビジネスの育成と競争の活性化、特許システムの改革などを挙げている。ただし「子供たちの安全を守りながら自由の権利を維持」というように、保護と自由をバランス良く両立させるのが難しい面もあり、オバマ-バイデン・プランの実行基盤をデザインするCTOは困難な職務になりそうだ。
さて注目のCTOの人選だが、Obama-Biden Transition Projectチームにはオバマ氏のIT政策を立案した元IACエグゼクティブのJulius Genachowski氏、Google.orgのSonal Shah氏、Level 3 CommunicationsのDonald Gips氏などが参加している。これらのチームメンバーのほか、Google CEOのEric Schmidt氏、GoogleのチーフインターネットエバンゲリストのVint Cerf氏、Amazon.com CEOのJeff Bezos氏、元SunのBill Joy氏など様々な名前がニュースやブログで挙げられている。現在サンフランシスコで開催中のWeb 2.0 Summitでは、パネルセッションがCTO人事の話題でたびたび脱線した。候補者リストは今後どんどん伸びていくだろう。それらの声に耳を傾けるとオバマ氏は宣言しているのだ。これからしばらく、テクノロジー業界においてはCTO人事が、国務長官や財務長官に匹敵するような話題になりそうだ。