NECエレクトロニクスは11月6日、NEC中央研究所と共同で開発した独自の超解像技術「1枚超解像技術」を搭載したシステムLSI「μPD9245GJ」を開発したことを発表した。サンプル出荷は、2008年12月から、量産出荷も同月中から開始する予定。サンプル価格は3,000円。
静止画、動画ともに、高画素化、大画面化が進みデータ量の増大が問題となっている。また、あらゆる機器にモニタが搭載され、さまざまな画像を映し出すようになっているが、低解像度の画像データを高解像度の表示パネルに映すとあらが出てしまい、画像にぼやけやギザギザ(ジャギー)が生じるといった問題があった。
そのため、画像処理を行うためには、データが多くても遅延なく高速に処理する能力、拡大処理によるぼやけた画質を改善する能力、組込機器での使用も可能な小型、低消費電力性能などが求められるようになっている。
超解像度技術は、一般的な画像拡大処理(バイリニアやバイキュービックなど)を行った場合に生じる画像のボケやエッジの粗さを改善し、画像拡大処理を行っても解像感が得られる技術。同社の1枚超解像度技術は、従来の超解像技術が、画像のフレーム・データを"複数枚"用いて処理するために、大容量のメモリを必要としてのに対し、"1枚"のフレーム画像から最小限のメモリのみで超解像処理を実現する技術。
NECエレクトロニクス 第一SoC事業本部 副事業本部長 金井徹郎氏 |
これにより、「省メモリで画質の向上が可能なほか、1枚処理のため処理量が少なくリアルタイムでの動画処理が可能」(NECエレクトロニクス 第一SoC事業本部 副事業本部長 金井徹郎氏)とするほか、「補間やエッジ強調などの解像感のアップを1枚の画像入力だけで、しかも表示パネルの前段に挿入するだけで実現することができる」(同)とする。
活用方法は色々とあるが、例えば、DVDなどで録画したSDの画像をフルHDの大画面パネルに表示させようとすると、映像出力側と表示機器側で表示サイズに6倍のギャップが生じるため、ぼけ感やジャギーなどが発生する。超解像技術を活用することで、解像感を維持しながら高解像映像に変換することが可能となる。
また、ビデオカメラなどでは、録画時のデータの圧縮率を上げることで録画時間を延ばすことができるが、画質も必然的に落ちてしまう。それを超解像技術を用いることで、高画質な画像としての再生をすることが可能となる。
プロセスは0.15μmを採用しており、最大画素数はSXGA(1280×1024ピクセル)/60fpsもしくはHDTV(1366×768ピクセル)/60fpsに対応する。0.15μmプロセスを選んだ理由は「色々とあるが、カスタマから早く使いたいという声に応えるためにこのプロセスを選んだ」(同)とのことである。
また、同技術についてはIPとしての提供も行っており同社のASICにも搭載されるほか、同社のデジタルAV機器向けシステムLSI製品群「EMMA」への搭載も予定しており、2009年度中には発表するという。次世代製品の開発も進めており、フルHD(1920×1080ピクセル)への対応やカラー10ビット対応などが行われ、2009年第2四半期に製品化を見込んでいる。
なお、同社では、同技術を用いたシステムLSIやIPコアの販売を推し進めることで、2010年4月にはシリーズ全体で月産100万個体制を構築するほか、2010年度に100億円の受注を目指すとしている。