NECは11月5日、システムLSI混載用のMRAMマクロの500MHz動作の実証に成功したことを発表した。同社では、これによりシステムLSI内のメモリマクロをすべてMRAMに置き換え、低消費電力化を実現する見通しが立ったとしている。

今回のMRAMマクロは、同社が従来開発してきたMRAMマクロ用メモリセルにトランジスタを3個、MTJ(Magnetic Tunnel Junction:トンネル磁気接合)を1個追加して、合計5個のトランジスタと2個のMTJによるメモリセルで構成されており、メモリセル内で読み出し信号を増幅したことで、ランダムアクセス時間500MHzを実現した。

従来と比べ、トランジスタ数、MTJ数ともに増加しているが、一般的なSRAMが6トランジスタ構成をとっているのに比べれば1トランジスタ少なくて済み、かつ2個のMTJはトランジスタ上に重ねて配置することが可能なため、SRAMと比べてチップの小面積化が可能だ。

また、MTJの製造プロセスは同社が独自に開発を進めてきたシステムLSIで用いられるCMOSプロセスの配線の間にMTJを作りこむ構造を採用している。

さらに高速なメモリマクロで採用されることが多い、セル内で読み出しポートと書き込みポートを分離した2ポート構成を採用しており、高速動作時の制御が容易に行えるようになっている。

NECでは、今回の実験の成功は、チップ上のメモリマクロのすべてをMRAMマクロに置き換えられる見通しを示すものとしており、今後はシステムLSI上のメモリをすべてMRAMに置き換えた形での動作検証を目指し、設計・試作を行っていくという。