Climate Savers Computing Initiative(CSCI)は11月5日、日本での活動開始1周年を記念した記者会見を開催、1年目の活動の成果と2年目の目標を明らかにした。
Climate Savers Computing Initiative 代表 ローリー・ワイグル氏 |
同団体の代表であるIntelのローリー・ワイグル氏は、温室効果ガスによる世界的な気候変動に対し「現代文明を支えるエネルギーのおおむね80%を占める化石燃料の燃焼によるCO2の排出が最大の要因となっている。我々は気候変動が不可逆な状態となる前に行動しなければならない」と、グリーンITの推進を行う必要性を主張した。
CSCIの目標は大きく分けて2つ。1つは、「電源管理を設定し、活用し続ける」であり、これには電源の効率を向上させるというアプローチが採られる。「電源内部のA/D変換で電力の30%が無駄になるほか、マザーボード上でさらに20%無駄にしている。サーバにはより高い効率のものが用いられるが、発熱の問題とそれを処理する冷却装置でやはり電力を消費している」(同)とし、根本的な効率改善を進める必要があるとした。
もう1つは、「エネルギー効率に秀でたコンピュータを選択、購入を促す」というものであり、これにより使用電力そのものの削減を目指す。
この2つの目標により、最終的には2010年までにコンピューティングの電力効率を50%向上させることを目指す。これは、全体のエネルギーコストを55億ドル削減することにつながるという。また、コンピューティング・プラットフォームから排出されるCO2を世界全体で年間5,400万t削減することも目指している。これは、自動車1,100万台を取り除く、もしくは石炭火力発電所20基の廃止に相当するほか、6万5,000km2の広さに植樹したことと同様の効果を及ぼすという。
現在、CSCIのメンバー数は日本が12、アジア・パシフィックが19、EMEAが92、米国が195となっており、地域ごとのプログラムも日本、アジア・パシフィック、オーストラリアで開始したほか、インドと南アフリカでの拠点設立に向けた活動が進められている。
1年目の成果としては、主に技術面で、電源650品、デスクトップパソコン700品、ノートパソコン800品、ワークステーション45品が基準を満たした製品として認可されたほか、複数のメンバーから今後の基準を満たした電源およびシステムの出荷が開始された。
また、電源管理の運用によるメンバー企業におけるCO2の削減が図られたほか、マザーボードの消費電力の効率化を図るプロトコルの作成と公表なども行われた。
一方、2年目の重点領域としては、「エネルギー効率の高いシステムの認知度と需要を引き続き喚起すること」(同)が最重要課題であるとした。また、メンバーの増加も引き続いて目指すとしており、エンタープライズ業界を中心に、個人や中小企業への情報発信も開始するという。すでに大学関連に向けたアプローチが企画されており、世界的に展開されることが見込まれる。
さらに、グリーンITに関するツールの提供、例えば"今日のCO2の使用状況と削減効果を計測"するツールなどを提供していくほか、基準を満たした製品がCSCIに登録されたことに対する情報公開やカタログ化などが予定されている。
CSCIに参加する各メンバー企業も、それぞれに目標を立ててグリーンITの促進を進めており、例えば日立製作所などでは、「CSCIの技術委員会活動として、高効率の電源を2009年度中に開発し、市場投入することを計画している」(日立製作所 情報・通信グループ エンタープライズサーバ事業部 事業部長 渡部眞也氏)としている。
また、マイクロソフトの業務執行役員・法務・政策企画統括本部 政策企画本部 本部長であるジェームス・フォスター氏は、「CSCIではMicrosoftとGoogleが同じ席にいる。そしてIntelなどのハードウェアのメーカーも同様に居る。これだけの企業が集まっているのだから、我々が立てている目標が達成できないことはない」とし、CSCIのメンバーが一丸をなってグリーンIT化を推進していくことを強調した。