サービス堅調も、円高が響く
富士通は、2008年度上期(4-9月)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比2.4%減の2兆4,537億円、営業利益は同12.3%減の385億円、経常利益は同2.9%減の290億円、当期純利益は46億円(前年同期は93億円の損失)で、減収減益だった。円高傾向に直撃され、約1,000億円の減収となり、この影響がなければ1,3%の増収になっていたとしている。
富士通 経営執行役 上席常務 CFO 加藤和彦 |
同社は、7月末に公表した今年度通期目標を下方修正、売上高は5兆500億円(7月公表時より3,000億円減)、営業利益は1,500億円(同700億円減)、経常利益は1,200億円(同650億円減)、当期純利益は600億円(同400億円減)とした。
売上高は、パソコン、携帯電話が減収となったものの、国内SIビジネスが公共、金融、ヘルスケアなどの分野で伸びたことなどにより、円高の影響がなければ、全体としては、おおむね前年同期並みの結果で、営業利益は、パソコン、HDDの減収、ロジックLSI、電子部品の競争激化などの影響があったが、サーバー関連のコスト削減効果、費用効率化、サービス事業の増収、コスト効率化などにより、7月末の予想と比べると、計画を35億円上回った。
部門別の状況をみると、サービス事業、サーバー製品が属する「テクノロジーソリューション」は売上高が同1.2%増の1兆5,249億円、国内に限れば7.4%の増収となる。営業利益は同48.1%増の573億円だ。サービス事業が、SI関連を中心に伸長するとともに、携帯電話基地局、事業者向けルータ装置、サーバー関連などが増収に貢献した。
海外では8.9%の減収。UNIXサーバーや英国の光伝送システムなどの売り上げ減が響いたが、為替の影響を除くと2%の増収だという。営業利益の面では、国内での実績が効果を上げ、欧州のサービス事業での、民需系ビジネス拡大にともなう初期コスト負担などを吸収、増益を果たした。
パソコン、携帯電話、HDDなどを中心とする「ユビキタスプロダクトソリューション」は、売り上げ高が同9.3%減の5,214億円、営業利益は同59.3%減の88億円となった。売り上げ面では、第1四半期(4-6月)は6.7%の増収だった一方、第2四半期(7-9月)は17.7%の減収に転じた。これは以下のような理由による。販売方式の変更により、携帯電話端末の買い替えサイクルが長期化したこと。第1四半期までは堅調であったパソコンが、第2四半期には価格競争激化、企業向け需要の伸び悩みの影響で減収となったこと。この部門は、為替差損の影響を除いても9%の減収だ。
営業利益が大幅減となったのも、やはり第2四半期の市場環境激変が大きく響いた。携帯電話端末の販売減とともに、高機能化によるコスト増、さらには、パソコンの競争激化、HDDの世界的な価格競争激化といった要因が打撃となり、第1四半期には99億円の利益を計上していたが、第2四半期には10億円の損失となっている。上期の出荷台数はパソコンが368万台(前年同期比15万台減)、携帯電話は250万台(同90万台減)で、携帯電話の落ち込みが目立つ。
同社の加藤和彦 経営執行役 上席常務 CFOは「アジア、ヨーロッパでは、いわゆるウルトラローコストパソコンが市場の1/3程度になった」と話し、同社も同種の低価格製品への参入を決めたことを説明、市場から低価格化の圧力を受ける、パソコン市場の厳しさを浮き彫りにしている。
LSI、電子部品などが含まれる「デバイスソリューション」は、売上高が同11.8%減の3,509億円、営業損益は73億円の損失(前年同期は61億円の利益)で赤字に転じた。国内では18.2%の減収となっている。65nm(ナノメートル)ロジック製品は、自社製のサーバー向け、画像処理用などは、第2四半期に売り上げ増だったが、90nmロジック製品、基盤ロジック製品は、デジタル家電や携帯電話向けなどで必要とされる量が低下、売り上げ減につながった。減収率は第1四半期が13.5%、第2四半期は22.4%にまでなり、厳しさを増している。
この領域が営業赤字となったのは、電子部品などで為替水準や価格競争の影響を受けたことも背景にあるが、LSIでは、6、7月に岩手県で発生した地震により、基盤ロジックの製造を担う岩手工場が操業停止を余儀なくされたことも大きく響いた。前年同期と比べ損益134億円悪化している。
第2四半期に為替水準の影響が非常の重くのしかかった。同社は、第3、4四半期の業績見通しの前提となる為替レートを1ドル100円と想定(7月末の時点と変わらず)しているが、今回の決算発表日は、99.79-96.08円で推移している。同社は、1円の為替変動により、下期の営業利益には約6億円の影響が出るものと予想している。
また、想定為替レートは1ユーロは155円を125円に、1ポンドは200円を160円に変更した。加藤上席常務は、北米のシステムプラットフォームの売り上げに警戒感を示すなど、為替相場の推移を伸長に見守っている。