米カリフォルニア州ロサンゼルスで始まったMicrosoftの開発者カンファレンス「Professional Developers ConferenceNews (PDC) 2008」。1日目の基調講演の舞台に現れたチーフソフトウエアアーキテクト (CSA) のRay Ozzie氏は開口一番、「過去数年にわたる取り組みについて、ついにエンドツーエンドで語れる段階を迎えた。今日はMicrosoftにとって様々な意味でターニングポイントになる」と述べた。そして既報のようにクラウドOS「Windows Azure」とクラウドプラットフォーム「Azure Services Platform」を発表した。MicrosoftのクラウドOSについては、PDC開幕前に"Strata"、"Zurich"、"Red Dog"などのコードネームと共に様々な噂が飛び交っていたが、それらをひとつの傘の下にまとめたのがAzure Services Platformだという。

CSAのRay Ozzie氏。PDC2008がMicrosoftのターニングポイントになると宣言

グローバル規模でサービスを展開できる能力がクラウドを手がける企業には求められる

クラウド後発となるWindows Azure

同社内でクラウドプラットフォームのビジョンが初めて示されたのは2005年10月のOzzie氏による「The Internet Services Disruption」というメモだった。コンピューティングアーキテクチャには3つの規模がある。まずMicrosoftのスタート地点である"パーソナル"。個人ユーザーがPCやモバイル端末を利用するエクスペリエンスである。次に大きいのが"エンタープライズ"だ。ビジネスインフラとビジネスソリューションをバックエンドシステムでホスティングする。そのエンタープライズシステムが昨今、グローバル規模でつながろうとしている。3番目の"Web"への広がりだ。実質的に無限の容量、世界中のどこからでもオンデマンドで利用できるハイスケールなインターネットサービス・インフラストラクチャが新たに求められているのが現状だ。

数年前、Microsoftのカーネル設計者であるDave Cutler氏とAmitabh Srivastava氏が、これまでに同社が築き上げてきた経験やノウハウ、資産を土台にWeb規模のプラットフォームを構築するプロジェクトをスタートさせた。ところが、その矢先に米AmazonがEC2 (Elastic Compute Cloud)のベータを開始(注:2006年8月)。同プロジェクトは出鼻をくじかれる形になった。EC2についてOzzie氏は、「イノベーションの実現と、設計パターン、構造モデル、ビジネスモデルの構築が産業全体を大きく変えた事実に、私はJeff Bezos氏とAmazonのスタッフに素直に脱帽したい」と、そのインパクトを素直に認めた。ライバルはAmazonだけではない。クラウドコンピューティング分野ではGoogleという強大な存在もサービスを展開している。そのような中で、後発と言えるAzureが存在感を示せるのだろうか?

最上のプラットフォームをデザイン

「AmitabhとDaveのチームが過去数年にわたって取り組んできたのは、クラウドコンピューティングのための我々のプラットフォームだ。"Microsoftの"という点において他と異なり、そして幅広くオブジェクティブである。Microsoftがコンシューマとビジネスに提供している全てのサービスを支える岩盤のような存在、基盤として設計されており、皆さん(会場の開発者)すべてにとっても最上の基盤であるようにデザインされている」という。

以前はISVの1人だったOzzie氏は自らの体験も踏まえて、プラットフォーム企業であるMicrosoftが長い歴史の中で現在でも開発者を惹きつけている3つのポイントを挙げた。まずプラットフォームのカギとなるアプリケーションを自ら構築し、プラットフォームがエンドツーエンドで機能することを実証している。2点目はユーザー規模。大多数のユーザーへのアクセスを保証することで、パートナーは開発に専念できる。ユーザー数もまた、安定したプラットフォームの条件だという。最後がISVやパートナーとの成功の共有である。これらがAzureにも引き継がれる。Amazonのクラウドサービスは空っぽの器のようなもので、開発者が自らソフトウエアやソリューションで中を満たす必要がある。一方、Azureはコンピューティング・ファブリックであり、文字通り布地(fabric)に置き換えて考えると、開発者はビジネスロジックに従ったデザインに専念でき、必要に応じて柔軟にサイズを変えられる(スケーリング)。