フィンランドNokiaは、技術企業であることにこだわっている。同社は世界数カ所にラボを持ち、1万4,000人を研究開発部門に抱え、「モバイル」に関連した新しい技術の研究を進めている。そのひとつに"屋内位置情報"がある。
Nokia Research Centerで2~3年前から屋内位置情報の研究を進めている無線システム・サービス担当リサーチリーダーのKimmo Kalliola氏に、屋内位置情報の可能性について話を聞いた。
Kimmo Kalliola氏 |
--屋内での位置情報認識におけるNokiaのアプローチはどのようなものですか?
屋内の位置情報を実現するソリューションとして、Nokiaでは、Wi-Fiのような無線LAN技術に注目しています。
GPSなどの衛星通信を利用した技術は、屋内の位置情報認識には不十分だと考えています。無線LANは、技術の構築、テスト、屋内のコンテンツ収集をはじめるのに利用しやすい技術です。無線LANデータベースと屋内の地図情報を集め、その上にサービスを構築していくわけですが、(クローズドな固有の通信技術を導入している建物もありますが)ユーザーが屋内の地図情報を貢献できるような大規模なプラットフォームにするには、一般的で普及している技術が適しています。このようなデータ収集の課題を解決するには、コミュニティアプローチが適していると考えています。
もちろん、ビジネスケースや技術を検証していかなければならず、無線LANが最も適している技術とは、現時点では断言できません。無線LANは通信を目的としたもので、位置情報を目的に設計された技術ではありませんから、位置情報に利用するのに最適とは言い切れません。
Nokiaでは、精度を改善するためのハードウェアやアルゴリズムも開発しています。これは無線LANを置き換えるのではなく補完するもので、将来無線LAN、さらにはLTEの先となるIMT-Advanced(ITUの4G規格)に統合されていくかもしれません。
現在、Nokiaの社屋で、無線LANをベースとした専用プラットフォームを立ち上げ、フロアマップを利用してサービスを構築しています。
--カバーエリアと端末はどうでしょうか? 無線LANよりも3Gのほうが広いのでは? また、デュアルモードはまだそれほど浸透していないのでは?
3Gなどのセルラーネットワークは広く利用されており、カバーエリアではアドバンテージがあります。ですが、無線LANと比べると精度で劣ります。というのは、セルラーの無線基地局の密度が薄いからです。一方、無線LANは、特に都市部では多くの建物が導入しており、アクセスポイントはたくさんあります。我々が現在想定しているようなショッピングモール、企業の社屋でのサービス提供を考えると、無線LANはかなり普及しており、位置情報に利用できるレベルにあると見ています。
無線LAN以外にも、Bluetooth、セルラーIDなども同時に検証しています。利用できる技術を組み合わせたり、状況に合った最善のものを使うことを目指しています。
端末では、無線LANとセルラーの両方を利用できる機種は増えています。Nokiaでは、新たに投入するスマートフォンのほとんどで無線LANをサポートしています。
--精度はどのレベルまで実現できますか?
無線LANの場合、部屋レベルでしょうか。もちろん、部屋がものすごく広いなどシチュエーションはさまざまですが、アクセスポイントの設置数によっては3m程度の誤差まで実現できます。
端末のハードウェア性能にもよりますし、端末がポケットに入っているのか、机の上にあるのかなど端末の所在場所にも依存します。
カフェテリアなどのオープンなスペースは難しさがあります。部屋というには広く、吹き抜けだとどうなるのか。この分野は、現在の無線LANにアドオン技術を加えることで精度を改善できると見ています。