半導体ベンダの米Cypress Semiconductorは10月27日、組み込み市場に向けた2.4GHz帯を用いた無線通信(RF)ソリューション「CyFi」を発表した。
Cypress SemiconductorのVice President,VP/GM HID/RF,Timing,and OpticsであるDavid Kranzier氏 |
同ソリューションは、同社の組み込み設計ソフトウェア「PSoC Designer」にあるCyFiプロトコルスタック、PSoC、CyFiトランシーバ「CYRF7946」で構成される。同ソリューションについて、同社Vice President,VP/GM HID/RF,Timing,and OpticsであるDavid Kranzier氏は、「低消費電力性、低コスト、開発期間の短縮の3つを狙って開発した」とする。
同トランシーバは、DSSS(Direct-Sequence Spread Spectrum:直接拡散方式)とActive Link Managementを搭載することで通信の信頼性を向上させている。DSSSは、通信中にノイズが発生しても、復元時にノイズを拡散させることで通信への影響を減らす方式。同トランシーバでも、1バイトのデータを32個のチップ化し転送することで、32チップの一部にエラーが生じても1バイトのデータへ復元する時にエラーを取り除くことでデータの信頼性を確保している。
また、Active Link Managementは、2.4GHz帯の空きチャネルを探し、他との干渉を回避するというもの。具体的には、一番初期のデータ送信時には送信出力は低消費電力を図るため、一番低い送信出力-5dBmおよび最大通信レートの1Mbpsで通信を開始、それで障害が発生したことが確認された場合、250Kbpsへと通信レートを引き下げて再度挑戦。それでも駄目な場合、送信出力を最大の+4dBmまで引き上げていき、それでも通信ができない場合に空いているチャネルを探すという手順となる。なお、周波数チャネルは80個用意されており、その中から開いているチャネルを自動で探し割り当てられる。
消費電流は、スリープモード時で0.8μA、ピーク時で23mAである。「基本的な概念は、なるべく長い時間スリープモードを維持すること。そのため、送信時などでは高い通信レートから行い稼働時間の短縮を図っているほか、近いところには弱い送信出力といったように出力を動的に変化させることで電力効率を向上させている。そのため、ボタン電池を使用した一般的なセンサアプリケーションで4年程度のバッテリ寿命を維持できる計算となっている」(同)という。
さらに、プロトコルスタックは、ハブ用に8KB、ノード用に5KBのフラッシュメモリを必要とするが、ZigBeeなどのほかの同等のワイヤレスソリューションと比べても小さなメモリサイズであり、これによりPSoCがコントロールするシステム機能を追加するスペースを確保できるとしている。なお、プロトコルスタックはハブ1つにつき最大250ノードまでのネットワーク容量を持っており、そのすべてが非同期の双方向通信となっている。
このほか、設計画面ではモジュールをドラッグ&ドロップするだけで追加できる機能が搭載されており、それにより開発の効率が向上するという。
なお、CYRF7936はすでに供給を開始しているが、CyFiソリューションを用いたワイヤレスシステムの施策とデバッグの評価が可能なCyFi低電力RF付PSoC FirstTouchスタータキット「CY3271」、および環境センシングキット「CY3271-EXP1」、RF拡張キット「CY3271-RFBOARD」、CyFi低電力RF開発キット「CY3271-CYFI」も同社オンラインストアおよび代理店経由で提供が行われている。