RAIDコントローラでグリーンIT

1つのストレージ環境で、SASとSATAの両方に対応できるUnified Serial RAIDコントローラを提供する米Adaptecは、ストレージの消費電力を削減することができる機能「インテリジェント パワーマネージメント機能」の提供を開始した。

この機能は、HDDの電力設定を、(1)通常状態、(2)スタンバイ、(3)電源オフ(パワーオフ)、の3つに設定することが可能になるというもの。通常状態は言わずもがな、HDDがフル回転が回転している状態で、この場合、HDDの消費電力は1ドライブあたり10~12W程度が一般的である。

インテリジェント パワーマネジメント機能によりHDDの消費電力を低減できる

AdaptecのDirector,Branded Product Marketing,Data Protection Solutions GroupであるSuresh Panikar氏

スタンバイ状態は、「例えば通常状態で1万5,000rpmのHDDを2,000~3,000rpm程度に落としてやることで、消費電力を落とそう」(AdaptecのDirector,Branded Product Marketing,Data Protection Solutions GroupであるSuresh Panikar氏)というもの。消費電力は1ドライブあたり5~7W程度となるが、I/Oはアイドルモードに入るため、通常のオペレーションに戻るために7~10秒程度の時間が必要であるという。

また、電源オフ状態は、文字通りスピンドルモータを停止させ回転そのものを止めてしまうこと。これにより、1ドライブあたり3W程度まで電力を下げることが可能となる。ちなみにI/Oはやはりアイドルモードとなり、通常のオペレーションに戻るまで20~40秒程度の時間を有する。

ただし、「アイドルモードになっていても、OSやデータベースのレジストリをRAIDコントローラにキャッシュしており、ユーザー側からは止まっているように見えない工夫が施されている」(同)という。

今あるものを有効に使うのがAdaptec流グリーンIT

米IDCの調査によると、現在、世界中では5,000万台のHDDが外付けストレージアレイの中で稼働しており、これらの消費電力および冷却費用には13億ドル以上が費やされ、この金額は今後も高まり続けるという。「データセンター周辺における消費電力の40~60%がHDDの消費電力とも言われている」(同)であり、グリーンIT化を進めるにあたっては、ストレージの消費電力を削減する必要がある。

HDDによっては、グリーンITを謳い通常稼動時の低消費電力を実現した製品も登場してきた。しかし、既存のストレージのHDDを入れ替えようとすれば、膨大な入れ替えコストと手間が発生することとなる。

「そうした従来製品に対してもRAIDコントローラを変えるだけで、低消費電力化が図れることは、余分なコストの発生を抑えるのにも役立つ」(同)であり、「今あるものの使い方を変えることでグリーンITを提供していくのがAdaptecの戦略」(同)だという。ちなみに、市場に出回っているほとんどのHDDで対応ができるという。

単なるRAIDコントローラのサプライヤから変貌

同機能が主なターゲットとしているのが、ファイルサーバやプリントサーバ、アーカイブ、ディスク-to-ディスク用のニアラインディスクドライブといった、比較的アイドル時間が長いアプリケーション。特に中小企業で用いられるアプリケーションの場合、夜間のアクセスが少ないことが想定されるため、相当の効果が見込めるという。

インテリジェントパワーマネジメント機能が対象とするアプリケーション(Adaptecでは、IDCの報告する5,000万台の外付けストレージアレイの内、30%程度はこうした製品であるとみている)

これらの電源管理は同社のユーザーインタフェース「Adaptec Storage Manager」にて行われる。同インタフェースでは、HDDを使用する時間の設定(スタンバイ/オフにしない時間の決定)やアレイ構成時のパワーマネジメントの設定などが可能である。アレイ構成時のパワーマネジメントの設定とは、例えば12台のストレージボックスがあったとすると、その内4台にOSが搭載されているため常時稼働のセッティングをしておき、残り8台にのみスタンバイなどを行うことができるというもの。

インテリジェント パワーマネジメント機能で設定可能なパラメータ各種

これらの管理は、色分けした状態で見ることができるため、感覚的な管理も可能だ。なお、同インタフェースにおける電源管理機能はファームウェアをアップデートすることで使用することが可能となる。

HDDの電源がオフの時は濃い緑色、スタンバイの時は薄い緑色でそれぞれ表示される

Suresh Panikar氏は、「データセンターには、従来ネットワーキング、ストレージ、コンピュータといった垣根が存在していた。しかし、現在、その垣根はなくなりつつある」と語る。また、「以前は、ストレージと言うと、RAIDやストレージボックスのことを単に指し示していた。しかし、現状、それ以外の分野で起きていることにも目を向けることで、新たな技術を生み出すことが可能となった」としており、ユーザーに対しても「俯瞰的な物事の捉え方をすることで違うアプローチができるようになるはず、AdaptecはRAIDコントローラを提供するが、そうした意味では単なるRAIDコントローラのサプライヤから変貌を遂げつつある」とし、今後もAdaptecらしいグリーンITを追及していくとする。

余談だが、Adaptecでは、自社のWebサイトでHDDの種類と台数などを入力することで、どの程度のコストを抑えられるかが分かる「Green Saving Calculator」というサービスを提供している。興味のある方は日本語のサイトからでも行けるので、試してみると良いだろう