総務省は14日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の会合を開き、技術検討WG(ワーキンググループ)がB-CASカードの見直しに関する議論の進捗状況を報告した。同WG主査の村井純氏は、B-CASカードによる視聴者のストレスなどの課題に加え、B-CAS方式に代わる著作権保護方式のあり方についても、今後同WGで議論すると述べた。
B-CASカードとは?
B-CAS(ビーキャス)は株式会社ビーエス・コンディショナル・アクセス・システムズ(BS Conditional Access Systems)の略。同社が提供する放送受信方式をB-CAS方式と呼ぶ。
B-CAS方式は、BSデジタル放送の有料放送受信者を対象とする限定受信システム(CAS)としてスタート。だがその後、BSデジタル放送以外にも利用され、地上デジタル放送におけるデジタル著作権管理(DRM)の一部として、正規の機器を認証する限定受信方式として利用されている。
同方式では、放送波に伝送路暗号(スクランブル)が施され、スクランブル解除の為にはB-CASカードが必要。受信機での権利保護規定遵守を、B-CASカード支給契約によるエンフォースメント(強制)で担保している。
情報通信審議会の中間答申で見直し方向に
だが、総務省の検討委員会の検討結果を反映した同省情報通信審議会の第5次中間答申では、「現在のエンフォースメントのシステムの下では、地上デジタル放送の受信機を購入すると、B-CASカードが同梱されており、放送を視聴するためには、当該カードの取扱い等について一定の知識と注意が必要」と指摘。
その上で、「このような知識や注意を求められることについて、ストレスを感じる視聴者が多数にのぼる可能性は高く、受信機の普及促進の観点から、現在のエンフォースメントのシステムの改善が必要ではないか」などとし、B-CAS方式の見直しを行う方針が示されていた。
3種類の技術方式をWGで検討へ
今回開かれた同検討委員会の第45回会合では、B-CAS方式について議論している技術検討WG主査で慶應義塾大学の村井純氏が同WGでの議論の進捗状況について報告。
B-CAS方式の課題として、(1)視聴者のB-CASカードによるストレス、(2)コストと効果、(3)スクランブルの必要性、の3点が指摘されていると述べた。
その上で、今後導入を検討すべき地上デジタル放送の著作権保護のための新たな技術方式として、(1)B-CASカードと同じカード方式、(2)チップ方式、(3)ソフトウェア方式、の3種類が提案されていると説明。
「それぞれの技術方式について、B-CAS方式の議論の中で指摘された課題を考慮しながらWGで議論し、委員会に報告していきたい」と述べた。
さらに、「視聴者がB-CAS方式に感じるストレスについて調査を行い、課題を具体化していきたい」と話した。
これに対し、同委員会委員で主婦連合会の河村真紀子氏は、「B-CASカードによるストレスの問題は、いろいろな問題のごく一部でしかないと認識している。カード1枚のコストがいくらかかるかなどの問題だけではなく、地上デジタル放送にスクランブルは必要かなどの深い議論が必要ではないか」と主張した。
同じく委員で実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏も、「B-CAS方式には大きな穴がある。これから生産する機器に対してどういう方式がいいかをWGで検討してほしい」と注文を付けた。
技術検討WGでは委員からの指摘を考慮し、今後議論を進めていくとしている。