日本オラクルは、アプリケーション品質管理製品市場に参入する意向を表明、Webアプリケーション品質管理製品「Oracle Application Testing Suite」の本格的な提供開始と、データテストでの機密情報保護を担う「Oracle Data Masking Pack」を投入すると発表した。

「Oracle Application Testing Suite」は、米オラクルがエンピレックス社から買収した「e-TEST suite」を、オラクルの製品体系に組み込んだもので、同社のアプリケーション管理製品「Oracle Enterprise Manager」に統合される予定だ。同社では、この領域の成長性に着目、投資積極などを考えており、新たな市場として重点化していく方針だ。

ガートナーなどによれば、全世界の平均で、ITシステムのダウンタイムは年間87時間に上り、1時間に4万2,000ドルの損害が発生しているという。その主な理由は、全体の7割ものアプリケーションが、本番の環境への導入以前にテストされていないことだ。ITのために用意される予算の6-7割が、システムの運用、維持、管理に費やされている。CIOの40%は、自動化ツールが不足していると指摘する。

米オラクル アプリケーション/システム開発担当バイスプレジデント Leng Leng Tan氏

「近年の経営環境は激しく動いている。企業は変化に迅速に対応しなければならない」(米オラクル アプリケーション/システム開発担当バイスプレジデント Leng Leng Tan氏)ため、アプリケーションもさまざまな変更を求められることになる。「変更されても、本番環境には影響がないようにする必要があり、品質管理がいっそう重要になる。この分野は大きく成長しており、当社にとって大きな意味を持つ」(同)。同社がアプリケーション品質管理製品の市場に足を踏み入れるのには、このような背景がある。

同社の「Oracle Enterprise Manager」は、オラクル/非オラクルのアプリケーション、ミドルウェア、データベース製品を統合的に管理できる。「Oracle Enterprise Manager」に「Oracle Application Testing Suite」を組み込むことで、Webアプリケーションの開発、テストから本番導入、パフォーマンス管理まで、アプリケーションのライフサイクル全体にわたるシステム管理を支援することが実現する。

3つのツールで構成

今回発表された「Oracle Application Testing Suite」は、以下の3つのツールで構成される。

「Test Manager for Web Applications」(旧e-Manager Enterprise)は、 テスト工程全体を統括する。アプリケーション品質についての情報を一元的に管理し、品質状況を可視化する。また、開発者、テスト担当者などの間の情報共有を円滑化し、共同作業をしやすくする。

「Load Testing for Web Applications」(旧e-Load)は、WebアプリケーションやWebサービスの性能と拡張性をテストする。複雑なアプリケーションに対応し、負荷テストを自動化、実際の本番環境と同じように、複数ユーザーの負荷をシミュレートすることも可能だという。

「Functional Testing for Web Applications」(旧e-Tester)は、 Webアプリケーションの機能テスト、プログラム修正後に問題が出ていないかを検証する回帰テストを自動化しており、同社によれば、スクリプト作成時間が半減され、プロジェクトのテスト・スケジュールのうち数週間を短縮できる。

これらの製品群は、テストの効率化と自動化により、アプリケーション品質の向上につなげようとしているわけだが、本番環境のデータベースには、機密情報が含まれており、セキュリティ面の配慮が必要になる。そこで、アプリケーションテストの際、本番データベースのデータを使用しながらも、データの機密性を保護する役割を受け持つのが「Oracle Data Masking Pack」だ。

「Oracle Data Masking Pack」は、企業の機密情報や個人情報を、データ特性を保持すると同時に暗号化することが可能で、暗号化されたデータを使用した場合でもアプリケーションの整合性が維持される。また、不可逆的なプロセスを使用したルールに基づきスクランブルすることで、オリジナル・データの検索、リカバリ、リストアができないようにしている。

日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏

「Oracle Application Testing Suite」は、エンピレックス社の「e-TEST suite」を承継しているため、日本オラクルでは、既存製品のサポートを継続するとともに「従来の製品ではできなかった、アプリケーションやデータベース・アプリケーションの診断チューニングなど、新しい価値も付加する」(日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏)意向だ。

同社は、新たな領域への参入にあたり「System and Applicationビジネス推進部」を設け、アプリケーション品質管理ソリューションの専任部署を起動させ、エンピレックスの、Webテスト・ソリューション事業部を統合、営業体制を整えるとともに、同社のコンサルティングとエンピレックスのサービスを融合させ、一貫したサービスを提供することを目指す。