Microsoftは10月10日、Webブラウザのプラグインとして動作するプラグイン「Microsoft Silverlight 2」を来週中に公開すると発表した。ブラウザのプラグインとしてRIA(リッチインターネットアプリケーション)を実現するSilverlightでは、新バージョンでDRM(デジタル著作権管理)をサポート。コンテンツを安全に配信できるようになる。

左からUSENコンテンツ事業本部ブロードバンドコンテンツ部ゼネラルマネジャー兼GyaO事業本部メディア企画室の高野輝次氏、マイクロソフト執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長大場章弘氏、エス・エス・ジェイ商品企画部長尾花俊孝氏、アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジ本部インフラストラクチャコンサルティンググループパートナーの土屋光司氏

Web 2.0をはじめとするインターネット技術の発展の中、従来のHTMLだけでは構築できなかったリッチなインタフェースを備えるRIAの利用が進展している。RIAを実現するアプリケーションとしてはAdobe SystemsのFlashがあり、Silverlightもこれと同様にブラウザ上でのRIAを可能にする。

Silverlightの特徴はクロスブラウザ、クロスプラットフォーム、マルチデバイスへの対応で、Windows OS上ではInternet ExploreだけでなくFirefoxもサポート。Mac OS上でも動作する。また、Linux向けにはオープンソースによるMonoプロジェクトにMicrosoftが協力し、Moonlightとして開発が進められている。今後は、Windows Mobile搭載の携帯端末や、Windows CE搭載の組み込みデバイスにもサポートを広げていく意向だ。

昨年9月の公開以来、SilverlightはUSENの動画配信サイト「GyaO」やヤフーなどがこれを採用してきたが、Silverlight 1ではDRMをサポートしないため著作権のあるコンテンツの配信には向かないなど、本格的な普及にはいたっていなかった。

Silverlightを実装したGyaOのコンテンツ。DRMに対応していないため、一部コンテンツの配信でしか利用されていなかった

Silverlight 2では、現在Microsoftが開発する次世代のDRMである「Microsoft PlayReady」をベースとしたSilverlight DRMを実装。このDRMは従来のWindows Media DRM 10と互換性があり、すでにWindows Media DRMで管理しているコンテンツを変更する必要はない。これによって、従来は閲覧できなかったMac OSやLinux上でも、Silverlight 2を経由することでWindows Media DRM付きのコンテンツを閲覧できるようになるのが大きなメリットだ。今後Windows Media DRMはPlayReadyに順次置き換わっていくことになるそうだ。

新たに実装されたSilverlight DRM。Expression EncoderとIISを組み合わせたアダプティブストリーミングによる回線の最適化や高クオリティな動画の配信なども可能になる

Silverlight 2の新機能としては、「Deep Zoom」機能があげられる。これは、解像度の高い画像を高速に拡大縮小できる機能で、さらにインタラクティブな操作性も実現できる。

ハードロックカフェのサイトによるDeep Zoomの例。写真のサムネイルがスムーズに拡大していく

写真をさらに拡大していき、The Beatlesのポール・マッカートニーの封書の写真が表示。よく見ると、切手の部分も画像のサムネイルになっているので、そこがさらに拡大され、ハードロックカフェの写真が表示される

その写真の一部にThe Beatlesの人形が置かれていて、それをさらに拡大させると、ポール・マッカートニーの人形の頭まで拡大された。この動きが非常にスムーズに動く

Web開発者にとっても新機能が追加されている。開発言語はJavaScriptだけでなくVisual Basic、C#、IronRuby、IronPythonをサポート。開発者は既存のスキルやツールを使いながら開発ができる。

Silverlightの開発環境

データグリッド、リストボックス、スライダー、カレンダー、ボタンなど40種類以上のコントロールを標準で同梱。高度なカスタマイズ機能も備えており、簡単にカスタマイズしてオリジナルのコントロールを作成できる。

Silverlightに同梱される標準コントロール。Expression Blendから簡単に利用できる

オーサリングツールとしては「Microsoft Expression Blend」「Microsoft Expression Encoder 2」が用意されているが、Silverlight 2をサポートするサービスパック(SP)1日本語版を11月中旬から順次提供開始する。また、Visual Studio 2008用のアドイン「Silverlight Tools日本語版」も11月上旬から提供開始する。

コントロールのカスタマイズも用意。作成したボタンに対して、マウスオーバーで色を変えたり、マウスカーソルの形を変えたりの作業が、コードを1行も書かずに処理できる

Silverlight 2ではそのほか、RESTやWS*/SOAP、RSS、HTTPなどのWebサービスもサポートし、クロスドメインやソケット通信にも対応。LINQ(Language Integrated Query)も利用可能になった

Silverlight 2では、企業システムとの統合も念頭に置かれている。企業システムは、ともすればユーザビリティは犠牲になりがちだったが、Silverlight 2を使うことで高いユーザビリティが実現できるとしている。

同社では、「今後SharePointなど、企業系システムとの統合に対するガイダンスを提供する」としており、こちらの分野にも注力していく意向だ。

また、Silverlight 2では提供開始を前に国内企業7社がSilverlightに対応したサービスやアプリケーションの開発を表明。NECビッグローブは、Deep Zoom機能を生かしたフォトビューア「BIGLOBEウェブリアルバム 新着ズームビューアβversion」を提供。エス・エス・ジェイは業務パッケージの「SuperStream」のUIをSilverlightで構築、ユーザビリティを向上させる。

エス・エス・ジェイのSuperStreamのSilverlight 2版。従来に比べてリッチなインタフェースに変更されている

アクセンチュアのSilverlight 2を使ったRIAのデモ。これはデモ用に作成されたものだが、経営層が事業の状況を確認する業務ツールとして、RIAによる操作性の高さなどで業務効率がアップする。そのほか、社員の勤怠管理など、企業内で毎日のように使われるシステムのユーザビリティ向上はインパクトがあるという

そのほか、中部国際空港のセントレア、TDKラムダ、日本デジタルオフィス、ヤフー、楽天といった企業がSilverlight 2向けに新たにサービスなどを展開していく予定だ。従来からSilverlightを利用していたUSENのGyaOでは、カラオケコンテンツ「歌えるカラオケ」上でSilverlight 2を採用。映像の下部に広告を埋め込むという手法を導入する。

Silverlight対応のパートナーも増加中

USENのデモ。動画の合間に、広告が一時的にせり上がってくる