ヤフーは2日、9月17日に厚生労働省が意見募集を開始した「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関し、同省に意見書を提出した。同省令案に従えば、医薬品のネット販売が大幅に制限されることになるため、Yahoo!ショッピングで医薬品販売の場を提供している同社は「改めて関係事業者を構成員とした議論が行われることを要望する」とし、省令案の再考を求めている。

2006年6月に公布され、2009年春にも施行が予定されている改正薬事法では、リスクに応じて医薬品を「第1類」「第2類」「第3類」の3種類に分類。今年7月には、厚生労働省の検討委員会が、各分類の医薬品販売方法の在り方について報告書の中で言及。

同報告書によれば、第1類は「情報通信技術を活用した販売は適当でない」、第2類は「対面の原則が担保されない限り、販売することを認められない」とし、この2分類の医薬品のネット販売について否定的な見解を提示した。

同報告書を受け9月17日に公表された省令案では、第一類と第二類の医薬品については、医薬品に関する情報を直接提供できる対面販売を原則化。これができないネットショップなどについては「第三類医薬品以外の医薬品を販売し、又は授与しないこと」と明記。

業界団体の日本オンラインドラッグ協会によると、同省令案に従えば「現在はインターネットで購入できる、解熱鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬、水虫薬などの販売もできなくなる」という。

ヤフーでは、Yahoo!ショッピングで医薬品販売の場を提供。「医薬品や関連商品の売り上げは順調に伸びている」(同社)という。

同社は、ネットショッピングにおける成長分野を規制する同省令案の再考を求め、今回厚生労働省に提出した意見書で以下の4つの問題点を指摘している。

  1. 一般用医薬品のネット販売の権利を制限することの問題点

  2. 一般用医薬品の販売場所を薬局等の場所に制限することの問題点

  3. 薬剤師が対面で対応する方がインターネット上で対応するよりも望ましい 情報提供ができるとする論拠の問題点

  4. ネット販売が危険であるという論拠の問題点

(1)の問題点については、「インターネットを介する薬局等での一般用医薬品を販売・購入する権利を制限することについて、改正薬事法における法律上の根拠が存在しない」とし、「仮にあるとした場合であっても、今回の省令案は営業の自由(憲法22条)を合理的な理由なく制限するものであって、違憲無効の可能性もあると考える」と主張。

また、(2)の問題点については、「インターネット上の店舗も必ず薬剤師等の専門的な知見を有する者が運営しているため、インターネット上の画面を通じてその者からの情報提供が受けられる」と反論。「薬局等であってもインターネットを介しているということだけを理由で、形式的にその販売場所を規制する省令案は妥当と思えない」としている。

(3)の「薬剤師が対面で対応する方がインターネット上で対応するよりも望ましい情報提供ができるとする論拠の問題点」に関しては、「薬剤師は、薬剤師法第1条に定められているように、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることが任務であり、購入者の表情や体に現れる顔色や体調から病状について把握する能力を有している訳ではない」と指摘。

「薬剤師に法律上求められている情報提供とは添付文書等に基づく薬効などに限られるのであって、そのような情報提供については、対面で行う場合とインターネットを介して行う場合とで何ら違いもない」と主張している。

(4)の「ネット販売が危険であるという論拠の問題点」については、「一般用医薬品の服用による事故がインターネットを介した薬局等による販売に起因するものであるとの証明が何ら提示されていない」と指摘。

「一般用医薬品の安全性は、販売経路が店舗であるか通信販売であるかによって異なるものではない」とし、「一般用医薬品の危険性を根拠にインターネットを介した薬局等による一般用医薬品販売を規制する理由に妥当性はない」と強調している。

ヤフーでは、上記の問題点を指摘した上で、「外出が困難で店舗に出向くことができない高齢者や障害者、また近隣に薬局・薬店がない地域に住んでいる人が、これまでインターネットを介して薬局等から自らの健康維持に必要な一般用医薬品を便利に入手することができた利益を不当に剥奪するもの」と省令案について総括。

「ネット上の情報提供の実態が店舗における場合と比較して具体的にどう異なるのかなどの実質的な議論まではされていないため、改めて関係事業者を構成員とした議論が行われることを要望する」としている。