米Microsoftは9月29日 (現地時間)、開発者向けツールおよびプラットフォームの次版を「Visual Studio 2010」と「.NET Framework 4.0」にすると正式に発表、製品の詳細について語り始めた。

VS 2010/ .NET 4.0展開の5本柱

発表の中でMicrosoftは、両製品のリリースに関して5つの柱を挙げている。まず「次世代プラットフォームへの対応」。同社の事業の軸は、OS、プロダクティビティアプリケーション、サーバプラットフォームを組み合わせた次世代プラットフォームの推進であり、これらの技術に対応したソリューションを生み出すツールサポートを提供する。次に「開発者を喜ばせる」。Visual Studioは最初のリリースから開発者の生産性と柔軟性の向上を大きなテーマとしていた。Visual Studio 2010も引き続き"開発者のエクスペリエンス"を中核に、開発プロセスの改善を実現する。「中~大規模のソリューション開発」。ユーザーが手がけるソフトウエアは部門単位から全社規模まで広がり続けており、幅広いスペクトラムをサポートする開発環境を実現する。「最新トレンドへの対応」。アプリケーションアーキテクチャ、開発および展開における最新のイノベーション(例えばクラウドコンピューティング)をサポートするツールとフレームワークを提供する。

以上の4つの柱については、今後数カ月中に詳細を説明するとしている。Microsoftは10月26日から30日に米ロサンゼルスで開発者カンファレンス「PDC(Professional Developers Conference) 2008」 を開催する予定で、その場で新たな情報が提供されるだろう。

ライフサイクル全体の統合を推進

この日Microsoftは、新たな支柱と言える「アプリケーションライフサイクルマネージメント(ALM)のデモクラタイズ」の詳細に触れた。今日のアプリケーション開発は「窓のないサイロの中にいるように周囲を見渡せないため、生産性が鈍り、プロダクト開発サイクルが長期化する」と指摘する。そこで同社はアプリケーションライフサイクルを改善する統合的な管理ソリューションとして「Visual Studio Team System (VSTS) 2010 (コードネーム: Rosario)」を提供する。コア開発者やテスター、デザイナー、ビジネスアナリストなど、ソフトウエアチームに貢献する全ての人がライフサイクルを通じて参加できる新たな仕組みを含む。共同作業やコミュニケーションの効率化、ライフサイクル全段階の明りょう化、迅速かつ正確な判断を支援するリアルタイムデータなど、効果的なソリューションの統合を実現し、アプリケーション品質の向上につなげる。

Visual Studio Team System 2010のArchitecture Explorer。既存のコード資産とアプリケーションアーキテクチャを確認

"デモクラタイズ"する上でポイントとなるのが、Microsoftが推進するモデル駆動開発だ。VSTS 2010に含まれるモデリング・ツールでは、モデルを通じて技術的な知識を持たないユーザーにもわかりやすいビジュアルでビジネスやシステムの機能を定義し、また全体の円滑なコラボレーションを実現する。同ツールには"Oslo"でも採用されている、Microsoftのモデリングプラットフォームのコア部分が用いられている。新版は統一モデリング言語(Unified Modeling Language: UML)とドメイン固有言語(Domain Specific Language: DSL)の両方をサポートし、作業に応じて使い分ける「UML+DSL」を可能にする。

テストサイクルの効率化も強化点の1つ。ライフサイクル全般におけるテストで必要とされるツールの簡素化に取り組んだ。再現されないバグの排除、テストのセットアップと展開の高速化、重点的なテストプラニングとトラッキング、コード変更に対する適切なテスト実行などの新機能が盛り込まれている。

Agile開発プロセスのサポートなど、Team Foundation Server (TFS) の機能およびスケーラビリティ強化もコラボレーションを向上させる。発表では、ワークアイテムの関係を考慮したリンク、ソースコード管理においてトラッキングを視覚化するツール、TFS導入と管理の簡素化などが強化点として挙げられている。またVSTS 2010ではワークフローベースのビルドが導入され、エラーを広げない迅速な対処が可能になる。

なおライスサイクル全般におけるインテグレーションを推進する上で、MicrosoftはVSTS 2010にVSTS DevelopmentおよびDatabase製品を統合する。これに伴いVisual Studio Team System 2008 Development EditionまたはVisual Studio Team System 2008 Database Editionを所有するSoftware Assurance (SA) ユーザーに対しても2008年10月1日より以下の製品を無償で相互提供する。

  • Visual Studio Team System 2008 Development Edition

  • Visual Studio Team System 2008 Database Edition

  • Visual Studio 2005 Team System for Software Developers

  • Visual Studio 2005 Team System for Database Professionals