長ーい夏休み、さぞかしネットのあのへんやこのへんが騒がしくなるかと思いきや、児童生徒・学生が関連する大きな事件はランクインしなかった。学校生活の存在が、彼らを"事件"として扱われてしまうような書き込みへと駆り立てているのだろうか。9月からも彼らのネットライフが平穏なものであることを願いたいものだ。一方で、いい大人達の子供じみた事件が多く報道された。
2008年8月のネット事件簿 Top10(※)
順位 | 記事 | 掲載日 |
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1位 | 志田未来さんのマンション侵入で23歳無職男逮捕、ネット犯行予告と関連か | 8/8 |
2位 | 「そっと偲び寄って押す」イカ釣り客への殺人予告で無職男逮捕 - 京都府警 | 8/27 |
3位 | JASRAC、動画投稿サイト「TVブレイク」運営するパンドラTVを提訴 | 8/6 |
4位 | 出会い系サイトの"子どもからの誘い"急増 - 2008年上半期、警察庁調べ | 8/11 |
5位 | アウトドア用品サイト「ナチュラム」、顧客データ約65万件が流出の疑い | 8/6 |
6位 | 08年上半期「サイバー犯罪」が2,000件突破、未成年者関連が急増 - 警察庁 | 8/21 |
7位 | 紛争続くグルジア政府サイトがロシアのDDoS攻撃で沈黙 - 一部海外報道 | 8/12 |
8位 | 周囲の反応見たさで「名古屋駅で大量殺害」予告、31歳男逮捕 - 愛知県警 | 8/1 |
9位 | ガンズ未発売曲の無断アップロードでLA在住ブロガーを逮捕 - FBI | 8/29 |
10位 | 職場のストレス? 男性教員2人がブログで同僚中傷 - 奈良県教委が処分 | 8/12 |
※ 各記事の掲載日(8/1~8/31)から1週間のアクセス数をもとにしています。
ストーカーもネットで予告する時代に?
今回の1位は、またもや掲示板に犯行予告が書き込まれた事件。減らないものだ、というより、犯行予告の書き込みが行われることはこれまでと変わらなくても、それが報道されるケースが増えていると言った方が正確かも知れない。
このニュースが注目されたのは、その事件の内容よりも対象が志田未来さんだったことにあるだろう。これまでの犯行予告関連事件を振り返ってみると、有名人に関連するものとしては「冗談のつもり」だったという爆笑問題・太田光殺害予告や、恋人に振られた腹いせの平井堅コンサート妨害などがある。今回の予告はこうした人騒がせなものに比べると、かなり陰湿に感じられる。
しかし、警察が来たのに志田さんのご両親は「よくあることで気にしていない」とは……。芸能人にとってはこれくらい当たり前ということなのだろうか。メディアからは見えないところでそんな目に遭っているとは、女優とは大変な仕事だ。
そう言われても警察側は付近で警戒を行っていたとのことだが、犯人が逮捕されたのは母親がドアスコープで不審な男を発見して通報してから。マンションへは侵入されていたということだ。どの程度の警戒だったのかは不明だが、普通の人間でも意外とかいくぐってしまえるものなのだろうか。あるいは、"現行犯"が確定するまで泳がせた……というのは刑事ドラマ脳か。
ところでこの逮捕された23歳の男、「志田さんの熱狂的なファン」というからにはテレビドラマなどで志田さんを見ることのできる環境には居たと考えられる。また、志田さんの自宅住所を調べ、そこまで移動することもできたわけだ。さらにこの犯行予告が本人によるものであるなら、ネットの掲示板に書き込みをする手段も持っているということになる。"住所不定無職"と報じられているが、一体どんな生活をしていたのか、謎だ。
サイバー犯罪……その目的はけっこう普通の犯罪と同じ
ランキングの6位に入ったのは、今年上半期のサイバー犯罪(情報技術を利用する犯罪)についての記事。サイバー犯罪の検挙率等について8月21日に警察庁より発表されたものだ。それによると、検挙件数は前年同期(1,808件)より21.2%増えて2,192件で、2,000件を突破した。単純計算で1日約12件が検挙されていることになる。
そのほとんどを占めるのが、犯罪の実行にあたってネットワークを利用する「ネットワーク利用犯罪」。このうち、昨年減少傾向を見せた「ネットワーク利用詐欺」は、オークション詐欺が減る一方でワンクリック詐欺が増加し前年同期比+19.0%。「児童買春及び青少年保護育成条例違反」「わいせつ物頒布等」も増加しているが、特に顕著なのが「出会い系サイト規制法違反」で、同+307.7%の159件。"サイバー"とは言っても、電脳戦ではなくかなり即物的な目的の犯罪が多いようだ。
これらのサイバー犯罪に関して各都道府県警では相談窓口を設けているが、そこに寄せられた相談件数も前年同期比+16.5%の38,506件。1日平均で約210件だ。内訳を見ると「詐欺・悪質商法」に関する相談が約半数を占めており、「名誉毀損・誹謗中傷」や「迷惑メール」についての内容が増加しているという。警察庁ではネット上のトラブル解決支援サイト「インターネット安心・安全相談」を運営しており、こちらではいわゆる「ワンクリック詐欺」についての相談が半数近くに上っている。
ここでは、ネット関連のトラブル相談について基本的な対応を知らせてくれるほか、これまでの相談事例を検索して参考にすることもできる。架空請求から、掲示板・学校裏サイト等での誹謗中傷、不正アクセスまで、窓口がひとつというのがすごいが、利用者からすればわかりやすくて良いだろう。自分は大丈夫という人でも、一度見ておけば家族や友人が困ったときの参考になるかもしれない。この他、国民生活センターやIPAのサイトなどでもネット上のトラブル解決についての情報が提供されている。