IBMは17日、IBMのWebアプリケーション基盤ソフトウェア「IBM WebSphere Application Server(以降、WAS) V7.0」および「IBM Rational Application for WebSphere Software V7.5」の日本語版をリリースすると発表した。
日本IBM SW事業 WebSphere事業部 理事を務めるベイト・デイビット氏 |
記者発表には日本IBM SW事業 WebSphere事業部 理事のベイト・デイビット氏が登場し、同製品のプレゼンテーションを行った。「WASは世界でトップシェアを持つWebアプリケーションサーバです。使われている業種、地域も様々で規模を問わず活躍しています」と語る同氏。IBM社内のポータル利用においても毎日3000万ヒット、その他のビジネスのみならずエンターテインメントなどの各業種においても膨大なトランザクションの処理がWASによって運用されていることに触れ、「WASに求められているのはパフォーマンスという部分だと私は考えています」と同氏は語った。
今年はWASの最初のバージョンがリリースされた1998年から10周年という節目の年となる。「これまで一貫性のあるバージョンアップを繰り返してきたことにより、業界標準としての地位を築いてきました」とベイト・デイビット氏。今回の製品もJavaの最新バージョンであるJava EE5、Java SE6に対応させるなど、スタンダードなアップデートが行われているが、それだけではないのだと同氏はいう。
「V7.0はただのスタンダードアップデートだけではありません。SOA基盤としてのパフォーマンスにおいて大きな向上を果たしているほか、セキュリティの強化、柔軟な管理、開発の簡素化など数々の特長を持っています」と同氏。Webアプリケーションを基幹システムとして採用する企業が多くなる中、複雑化する利用形態やサイバー攻撃対策、法令遵守といったリスク管理の必要性も高まっている。WAS V7.0はこうした現状に応えられるWebアプリケーション基盤としての機能を持つのだという。
「WASのV7.0によって既存のシステムを使いながら大きくパフォーマンスを向上させることができます」とベイト・デイビット氏は語る。パフォーマンス向上の具体的な例として、Webアプリケーションサーバの能力を指標するSPECjAppServer2004で現在最速となっていることや、Webサービスの改善によりV6.1に比べ最大で2倍の性能向上を果たしているデータを公開。「数々の機能向上を果たしていますが、特に述べておきたいのは、すべての機能を一度にロードするのではなく、必要なものだけをロードしてゆくことによりパフォーマンスの向上を果たしています」と同氏はパフォーマンス向上の理由のひとつを語る。
企業にとってもこの大きなパフォーマンスアップは、ハードウェアの追加無しに費用対効果が望め、それに付随してエネルギーの削減が行えるなど、多くの利益をもたらしてくれるのだと同氏はいう。
セキュリティにおいては管理的な側面、また監査の側面において数々の機能を追加したという。監査ログの生成は当然として、監査者と管理者を分離することにより、詳細なログを取ることが可能となっている。これまでは管理者権限があればすべての機能が使えたが、監査者、管理者それぞれに別の権限を持たせることによりコンプライアンスレベルをコントロールするのだ。また、システムを複数のドメインに分けて管理するケースでは、様々なレベルに対して細かくセキュリティをかけるなど、非常にきめ細かいセキュリティコントロールが行えるようになっている。「これにより管理コストの削減が実現でき、企業の求めるコンプライアンスのレベルに対応できるセキュアな環境を築くことが可能となります」とベイト・デイビット氏は語る。
管理者がすべての操作を行えるという状況を無くし、管理者と監査者を職掌分離することによってコンプライアンスの強化が行える |
複数ドメイン環境においてもユーザーやインフラに対して粒度の高いセキュリティを設定できる |
WAS V7.0ではJavaの最新バージョン、旧バージョンいずれにも対応でき、さらに複数のバージョンのWASの管理も単一の画面で管理が行える。「新しいバージョンのWebアプリケーションサーバが出たからといって、お客様のシステムのすべてを入れ替える必要はありません」と語る同氏。過去に開発して現在も運用しているアプリケーションサーバはそのまま、V7.0を導入することも可能となる。これによってこれまでの投資が無駄になることなく、新しい環境を取り入れられるメリットが期待できる。
また、冒頭でも少し触れているがWAS V7.0ではJava EE5やJDK6.0を正式にサポートするなど、新しいWebサービス標準に対応していることにより、シンプルな開発を行うことが可能となっている。
さらに「アプリケーション開発ツールとしてはRationalがありますが、WAS V7.0にはこのツールのサブセットをバンドルして提供しています」と同氏は語る。WAS V7.0と同時にリリースされたWebアプリケーション開発ツールのフルバージョン版である「IBM Rational Application Developer for WebSphere V7.5」の機能の一部が「RAD Assembly and Dploy」としてWAS V7.0のライセンスの一部として提供されている。
V7.0では複数のJavaやWASのバージョンが混在する環境でも単一コンソールによって管理が行える |
開発ツールのフルバージョン「IBM Rational Application Developer for WebSphere V7.5」も同日リリースとなるほか、サブセットとなる「RAD Assembly and Dploy」はWAS V7.0にバンドルされる |
今回発表されたWAS V7.0のラインアップは「IBM WebSphere Application Server for Developers V7.0」が1ユーザーにつき11万900円、「IBM WebSphere Application Server Express V7.0」が100VUで25万7500円から、「IBM WebSphere Application Server V7.0」が100VUで58万9900円から、「IBM WebSphere Application Server Network Deployment V7.0」が100VUで221万7000円からとなっている。また、「IBM Rational Application Developer for WebSphere V7.5」は1ユーザー単位で60万6400円からで、いずれも9月27日よりIBMおよびIBMビジネスパートナー経由で販売される予定だ。
なお、VUはValue Unit単位。PAXを適用した100VUの場合のライセンス料金で、1年間のバージョンアップ・保守料金を含む。
「WASはIBMのソフトウェア製品のポートフォリオの中でもランタイムとしての重要な位置にあります。これはお客様にとっても同じことがいえます。さらにWASはセキュリティやパフォーマンスの向上を常に求められており、リニアで継続的な機能向上を今後も図ってゆくことになると思います」と今後の展開を語るベイト・デイビット氏。10月1日には同製品の関連イベントとして「WebSphere 10th Anniversary」という10周年イベントも用意されているので、興味のある方は訪れてみるとよいだろう。