日本オラクルは、製品開発の工程などで必要となる電子化データの閲覧ができる、ビューワー・アプリケーション「AutoVue Enterprise Visualization 19.3」を発売する。ユーザーは開発製品の設計図面や3次元CAD(Computer Aided Design)で作成したデジタルモックアップ、各種技術文章など約450種類のデータの閲覧と共有が可能になり、設計情報などのやり取りを円滑化し、全体の工程の効率性を向上させることを図る。

またこの製品は、オラクルの製品ライフサイクル管理(PLM)アプリケーション製品群「Agile PLM」に含まれており、同社のERPパッケージ「Oracle E-Business Suiteなどと連携できる。

「AutoVue Enterprise Visualization 19.3」は、3次元CAD形式のデジタルモックアップ、設計図面、組立指示書、電子基板の回路図から、PDF、スプレッドシート、ビジネス文書などにいたるまで、約450種類以上のデータ形式に対応しており、アプリケーションごとの専用ソフトを用意することなく、単一のソリューションにより、専門知識をもつ技術者だけでなく、さまざま業務を担うユーザーがこれらを閲覧することができる。

M3D画像を円滑に閲覧できる「AutoVue Enterprise Visualization 19.3

この製品を活用することで、開発製品のデザインバージョンの比較、3次元デジタルモックアップの検証、電子設計データの照合、仕様書へのマークアップ、製造装置の設計情報の検証、機構設計データと電気設計データの組み合わせによる干渉チェックなど、各種データの比較や検証ができ、修正すべき点など、さまざまな確認作業がしやすくなり、現場の利便性と生産性が向上するという。

製品開発を主として担当する関係部門は、これらの各種データを顧客、パートナー、サプライヤーなど社外関係者に示し、作業を進めなければならない局面が出てくるが、「AutoVue Enterprise Visualization 19.3」では、特別なインフラを用意することなく、Webベースでデータ閲覧機能を利用することが可能で、ビジネス・プロセスに携わる関係者は、製品情報を閲覧・共有することができる。デジタルモックアップのレンダリングは、ビューワー専用サーバが処理し、結果だけをクライアントに送信するしくみになっており、クライアントによるファイルのダウンロードは制限され、元データなど、機密情報の漏えいリスクを回避する。

同社では、「AutoVue Enterprise Visualization 19.3」による利点として、以下のような効用を挙げている。

設計データへのアクセス、共有がしやすくなることで、たとえば、電気設計の担当者と、機構設計の担当者など、設計者同士のやり取りや確認作業がシステム化され、開発効率の向上や、開発製品の質的向上が期待できる。また、Nativeのデータをそのままリアルタイムで扱えることから、オンラインで設計のレビューができるため、遠隔地間での共同作業ができるなど、移動時間が短縮できるとともに、紙の使用量を減らすことができる。さらに、CADソフト自体を購入しなくても、CADデータの閲覧ができるため、その分のコストが削減できる。

同社ではERP、SCM、PLMなど幅広いビジネスアプリケーションを基盤に、企業内のさまざまプロセス統合の支援を図ってきたが、技術者以外の各業務に従事する要員が、専門知識などが障壁となって、容易に技術文書に接することが困難な状況を、プロセス統合を進める上での大きな課題と捉え、今回の製品により、「見える化」を数値データだけでなく、技術情報にも適用する。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部の塚越秀吉本部長

この製品の狙う領域としては、まず工業製品、自動車、航空防衛、電子技術/ハイテクなどをはじめとする製造業と、工業技術/建設、石油/ガス、公共部門、公共事業といった、設計以上に図面を活用するような目的物構築後の保守、維持が特に重要になる分野の企業だという。日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部の塚越秀吉本部長は「技術情報を、業務プロセスのなかで活用するイメージを考えて、この製品を用意した。オラクルのアプリケーションと連動させることができ、それらと組み合わせて使える」と話す。

AutoVueはかつて、カナダのCimmetry Systemsが提供していたが、同社を米Agile Softwareが買収。その後、米オラクルがAgileを買収したことにより、AutoVueは、オラクルの製品体系に加わり、現在、「Agile PLM」を構成する製品群のビューワーとの位置づけで、同社では今後、各種アプリケーションにバンドルして販売していく予定だ。