日本オラクルは、ソーシャルネットワークを基盤とする、SaaS型の新CRMアプリケーション「Sales Prospector」を発売すると発表した。「Sales Prospector」は、企業の内外に散在する顧客情報などを集約、分析し、見込み客への効果的な提案や、優先すべき案件の絞込みにつなげられるなど、営業の現場での意思決定を支援するツールで、CRM製品群「Oracle Social CRM Applications」に属しており、Fusion Applicationsの一部でもある。また同社は、iPhone上から、企業内のBIデータを閲覧できる「Oracle Business Indicators」の無償配布を開始しており、オラクル製品とiPhoneの連携を本格化していく意向を示した。
従来のCRMは基本的に、階層型の組織体制を骨格としていたが、「Sales Prospector」は、ソーシャルネットワーク型を軸にしており、従業員相互のつながり、関係性を活かす発想を根本としている。顧客の過去の購買製品や購買履歴など、顧客の購買パターンのほか、顧客の企業概要やニュースなどの関連情報といった情報を集め、分析して成約可能性や案件規模を評価し、さらにこれらの分析結果から見込み客の推奨リスト、過去の実績をもとにした、有効な提案内容や購買決定の可能性を表示する。
このような、蓄積された過去の行動履歴をベースに顧客の嗜好を分析すれば、その嗜好に合致する商品やサービスの情報を提供することができる。最前線の営業要員は、こうした作業により析出された情報を活用することにより、見込み客ごとに照準を合わせ、どの製品を販売すべきかの指針を策定することが可能になり、案件の成約率向上に結びつけられるという。
「Sales Prospector」では、案件を円で表示、その面積で規模を表すなど、案件情報を視覚的に示しており、営業の現場で、何を優先すればよいかが、わかりやすくなっている。焦点を絞った上で、その顧客の購入履歴、あるいは、類似した案件の例などを取り出し、提案を補強するための武器として活用することができるわけだ。
日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 塚越秀吉本部長 |
同社はCRMの提供にあたり、業界の特性や事業展開の状況に応じ、多様な角度から適応する「総合CRM」を展開しており、今回の製品は「Social CRM」に位置づけられている。これは、ソーシャルネットワークの概念と、Web2.0アプリケーションを利用した、新たな発想のCRMだ。同社製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 塚越秀吉本部長は「ソーシャルネットワークが、企業向けのITソリューションに進化をもたらす。個人間のネットワークから生まれる情報の価値を、アプリケーションに取り込むことが狙い」と話す。
Oracleの多様なアプリケーション、iPhoneで活用可能に
一方、「Oracle Business Indicators」は、同社のiPhone対応アプリケーションの第1弾で、OracleのBI(Business Intelligence)製品を、iPhone上で活用するためのソフトで、App Storeから無償でダウンロードでき、簡単な設定でそのまま利用できる。これにより、iPhoneからサーバに接続して、営業成績分析、企業業績分析、リアルタイム在庫確認、需要予測、マーケティング分析など、BIにより分析された多様な情報を参照することが可能になる。サーバ側では、特に変更する必要はない。
日本オラクル 製品戦略統括本部 西脇資哲シニアディレクター |
同社製品戦略統括本部 西脇資哲シニアディレクターは、この試みについて「基本的メッセージはPDA、携帯電話を含め、すべてのクライアントから、オラクルのアプリケーションへのアクセスをサポートすること」と語る。「Oracle Business Indicators」は「単にiPhoneのブラウザで使用するものではなく、あくまでiPhone専用のアプリケーションであり、オラクルのアプリケーションと連動することができ、iPhoneのもつさまざまな機能を活用できる」(西脇氏)ことが強みだ。
「Oracle Business Indicators」により、営業部門は、BIの情報をiPhoneで閲覧することが可能になるわけだが、同社が描くiPhone活用法は、これに留まらない。CRMアプリケーションのフロントとしての用途も考えており、日報入力から顧客管理/照会、Google Mapとの連動、売上げ状況分析、さらには、iPhoneにより顧客へのプレゼンテーションまで、幅広い使い方がある。また、各方面での工程、ワークフローの進捗を監視する、リアルタイムモニタリングツールという切り口もある。部品調達状況、製造工程、稟議書などの進行、業務フロー異常などの確認に利用することができるという。そのほか、iPhoneを核にインメモリデータベースとの連携、コンテンツ管理、認証システムとの連携なども考えられる。
西脇氏は、オラクル製品がこれまで、組み込み技術やモバイル向けシステムでの実績があることを指摘「オラクルとコンシューマ向けのブランド力が高いiPhoneの連携は、アプリケーションの浸透をさらに進めていく上で効果が大きい」と述べており、同社では今後、iPhoneを多角的に活用していく意向だ。