米家電販売チェーン大手Best Buyは9月15日(現地時間)、米オンライン音楽配信2位Napsterとの買収合意を発表した。CD/DVD販売にデジタルコンテンツサービスを加えるのが狙いだ。Napster株1株あたり2.65ドルを現金で支払い、投資分を含めると買収総額は1億2100万ドルになる。すでにNapsterの取締役会の承認を得ており、順調にすすめば取引は2008年第4四半期に完了する見通しだ。
Napsterは1999年にP2P技術を利用したファイル共有システムとして登場。瞬く間に大学生やティーンエイジャーの間に広がり、MP3形式の音楽の共有による著作権侵害問題を引き起こした。全米レコード協会(RIAA)やレーベルからの訴訟を経てサービス停止に追い込まれ、2003年にRoxioがNapster資産を買収。同年10月にオンライン音楽配信サービスとして復活した。ただし利用されているのはブランドのみで、サービス自体はRoxioが所有していたPressPlayを土台としている。現在Napsterが提供しているサービスは、サブスクリプション制の音楽のストリーミング/ ダウンロード/ ネットラジオ、デジタル音楽のシングル/アルバム販売など。
買収後もNapsterは現在と同様にロサンゼルスを拠点に運営される。Best Buyは「Napsterの機能とユーザーベースを通じて新たな消費者層にリーチするとともに、幅広いデバイスを対象にユーザーが音楽とデジタルエンターテインメントを快適に楽しめる環境を整える」と説明している。
Amazon.comが音楽のデジタルダウンロード販売や映画/TV番組のストリーミングサービスを開始したように、CD/DVDを主力商品とする小売店は今デジタルコンテンツへの対応を課題としている。Best Buyは過去にPCの売上げが低迷した時期に、Geek Squadという独自のサポートサービスを立ち上げ、サービス面で消費者を引きつけることに成功した。音楽や映画の販売においても、Geek Squadのようなサービスソリューションとしてデジタルコンテンツ配信を用意すると思われる。AppleのiTunes Storeのライバルになるが、Best Buyは9月から米国の家電販売チェーンとして唯一のiPhone 3G販売パートナーになったばかり。iPodの販売にも力を入れている。Napsterを取得しても、しばらくはAppleに対抗するような動きにはせず、幅広い選択肢をアピールしていく可能性が高い。