富士通は、中堅企業向け統合ERPパッケージソリューション「GLOVIA smart」の新版、「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer」を開発、販売を開始した。
この製品は、中堅企業の経営者と現場管理者のマネジメント活動を支援する、経営の見える化ソリューションの役割を担い、「経営目標」と「現場施策」との関連性に着目、リアルタイムで、「経営目標」までの達成状況を見える化し、変化の兆しや異常を検知、迅速な対応ができるようにする。同社では、今後3年間で100セットの販売を目標としている。
富士通 中堅ソリューション事業本部 渡辺秋穂 統括部長 |
「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer」は、売上や利益などの「経営目標」と「現場施策」をひも付けて体系化した「シナリオ」を管理し、「シナリオ」と「現場業務の状況」を比較し、日々の達成状況と時系列的な進捗状況を数値化、グラフにして、科目残高、受注出荷、作業実績、在庫といった、現場業務の状況を表現するような情報を集約、目標との差異や傾向を明確に示すことができる。これにより「経営者と生産現場が情報を共有し、経営層は迅速な経営判断ができる」(同社中堅ソリューション事業本部の渡辺秋穂統括部長)。
同社は、「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer」が可視化するのは、「経営目標」と「現場施策」、作成した「シナリオ」、「現場業務の状況」であり、以下のような効果があるとしている。
「経営目標」では、利益拡大、在庫圧縮というような目標を、評価する指標と具体的な目標値とともに「見える化」し、営業利益、売上高、在庫などの財務データで集約される経営目標を階層化して表示する。「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer」本体に、ROA(Return On Asset:総資産利益率)、ROE(Return On Equity:株主資本利益率)、各種回転期間などの16種類の財務指標が添付される。
ただし、「経営目標」の可視化だけは、現場の状況はわからないため、「現場施策」では、その達成状況を評価できる指標を表示、現場業務の状況と比較し、異常だと認識される指標があった場合、その指標の背景は画面上で赤く表示される。
作成した「シナリオ」では、売上維持、在庫削減など、目標ごとに、誰が、どのような目的で、何をしなければならないかということを明示することで、「日常の現場で、目的意識が高まり、社員のモチベーション向上と目標達成のための自発的な行動を促す」(同社)ことにつながるという。
「現場業務の状況」という切り口では、現場での日々の状況、実績データを時系列にグラフ化し、監視することにより、変化点や異常をいち早く察知するとともに、特定の製品、工程などのように、特に重点的に監視が必要な対象に条件を絞り込むなどの機能がある。また、組織をまたいだ管理テーマについては、売上げ、原価といった財務情報を基準とした評価指標が困難になることから、業務マトリクスを用い、関連する部署、活動状況を業務工程の流れのなかで把握することが可能にする。
また、同社では、製造業がこの製品を導入しやすくなるよう、生産と購買部門向けの43種類の「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer 製造KPI(Key Performance Indicator:主要業績管理指標)テンプレート」を用意しており、製造業で想定される「利益拡大」や「在庫削減」などの経営目標実現のため、現場指標と経営目標達成のためのシナリオを中心に提供する。
この製品の開発に当たり、同社では、自動車部品、電子部品、圧延加工品の製造業、建設業の4社を対象に、各社の経営層に「マネジメント上のポイント」、「マネジメントにとっての見える化とは」の2点について、聞き取り調査を実施した。その結果、「マネジメント上のポイント」としては、「時間軸での管理が基本」「データを蓄積し、現状を捉える」「ルールを決めること。状況変化に応じ、ルールは常時見直すこと」などが挙げられた。
富士通システムソリューションズ ビジネスソリューション本部 中堅ソリューション企画部 佐藤徹哉 担当課長 |
「マネジメントにとっての見える化とは」では、「網羅的に見えること」「問題発生の予防薬」「全員が同じ目標・意識をもち、同じ指標や評価基準を元に会話を進めること」「現場を知ること」といった声があった。同社は「これらのヒアリングの結果を新製品開発の参考にした」(富士通システムソリューションズ ビジネスソリューション本部 中堅ソリューション企画部 佐藤徹哉担当課長)という。
同社の「GLOVIA smart」は、ポータル、ワークフローなどの「フロントソリューション」、製造、流通・サービス業向けの「業務ソリューション」「会計/人事給与ソリューション」「共通ソリューション」などで構成されており、「GLOVIA smart 経営管理 Attention Viewer」は「共通ソリューション」に位置づけられる。「GLOVIA smart」のターゲットとしては、売上高300億円程度までの中堅企業を想定しており、新製品もこの領域の企業からの需要を見込んでいる。
ITベンダー各社は中堅企業からの需要拡大に余念がないが、中堅以下の企業のなかには、技術力の水準の点で、ERPなども含め、経営効率化のための「武器」をなかなか十分に使いこなせないというところもあり、それは導入の障壁になるが、渡辺統括部長は「BIツールなどで、さまざまデータを閲覧することはできても、それらのどこに注目し、どう行動していいのかわからない、との話も聞く。そこで、新製品では、データを絞り、グラフのパターン、見え方を易しくし、わかりやすくした。(携帯電話でいえば)らくらくホンと同じような感じだ」と語り、浸透を図っていく意向だ。