ネットビジネス拡大のための新たな法的枠組みについて議論する「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の設立総会が9日、東京都のホテルで開かれた。同協議会会長となった東京大学名誉教授の中山信弘氏は、「ネットビジネスを拡大する上で大きな課題となっている著作権制度について、新たなスキームを考えていきたい」と、協議会設立の目的を語った。
同協議会は、中山氏の他、角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏、自民党参議院議員の世耕弘成氏、スクウェア・エニックス社長の和田洋一氏の4人が発起人となった。
角川氏は、インターネット上のデジタル・コンテンツ流通のために著作権を制限する「ネット法」を提唱する有識者フォーラムのメンバーともなっている。そのため、今回設立された協議会での議論は、このネット法の議論を前提に進められるものとみられる。また中山氏も、政府の知的財産戦略本部の「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」の会長を務めている。
設立総会開催時点で、映画、ゲーム企業など47社が法人会員、省庁職員、国会議員ら約200人が個人会員。設立総会冒頭では、中山氏があいさつした。
中山氏は、「中世の土地制度は複雑に権利が絡み合っていたために流動化できなかった。ある財を流通させ利用させるためには、権利の集中化が望ましい。現在の著作権制度は、中世の土地以上に、一つのコンテンツの上に、多数の権利が複雑に絡み合っている」と現在の著作権制度の問題点を指摘。
「自由主義経済の下ではまずはマーケットに任せ、著作権の権利処理も権利者と利用者との契約で処理すべきとの意見もある。だが、米国のように権利者と利用者が団体交渉し契約に持ち込むというような土壌は我が国にはない」と、契約による権利処理の難しさを述べた。
その上で、「ネットビジネス、コンテンツビジネスで、日本は明らかに遅れをとっている。コンテンツがうまく流通しない原因が著作権法だけにあるとは思わないが、スピードを持ってネットビジネスを立ち上げる上で、著作権問題が大きな課題となっている」と説明。
「利益をクリエイターに還元し、皆が栄えていくためのスキームを考えていくのがこの協議会の目的である」と述べた。
中山氏のあいさつの後、同協議会の規約案が了承され、中山氏を会長に、角川氏、世耕氏、和田氏を副会長に選出した。
副会長となった自民党の世耕氏は、「自民党の総裁選では、今後の経済政策において、成長重視の上げ潮路線をとるかどうかが焦点となっているが、経済成長を実現する上ではやはりIT・ネット産業が重要となる。音楽配信事業の主導権がAppleに握られたような事例の再現を避け、日本の産業界の皆さんがWin-Winの関係を築くべく、議論していきたい」と話した。
同じく副会長となった角川氏も、「現在は一つの産業として成立している映画などのパッケージソフトのレンタル事業も、昔は海賊版だらけだった。現在のネット業界も同じような状態だが、新しいネット時代の著作権制度を作るべく努力したい」と協議会設立の抱負を語った。
その後、副会長の和田氏、特別顧問となった自民党の小坂憲次衆議院議員、同じく特別顧問となった同党の松田岩夫参議院議員らがあいさつした。
協議会の今後の活動について、会長の中山氏は「新たな法制度について少人数グループで議論したり、シンポジウムを開催したりするなどの活動を行っていきたい」と話している。