OAS 取締役営業本部長 中島孝生氏

ソフトウェア開発ベンダーのオー・エイ・エス(OAS)は9月5日、コールセンター向けCTI/CRMシステムの最新版「デコールCC.CRM」の提供を開始すると発表した。同製品は、同社がこれまで「DeCall ContactCenter」シリーズとして業務ごとに提供していたコンポーネント群を統合・整理し、あらたに顧客とのやりとりを記録・分析するためのCRM機能を強化したものだ。以下では、OASで取締役営業本部長を務める中島孝生氏の話を基に、同製品の特徴についてお伝えしていこう。

デコールCC.CRMの開発背景について、中島氏は次のように語る。

「近年、コールセンターやCRMシステムには、電話、FAX、Web、メール、携帯電話などといったマルチチャネルでの応対手段のほか、基幹システムとの連携や独自業務への組み込みなどといったニーズが高まっている。最新版では、そうした多様な要件に応えられるように、機能の統合化を図り、顧客情報を一元的に管理できるようにした」

OASは、通信/ネットワークシステム、Webシステムの受託開発を中核事業とする企業で、コールセンター向けパッケージ製品は1999年から展開する。CTIシステムからアプリケーションまでを自社で開発しており、これまでに、国内外のベンダーが提供するPBX、SIPサーバ、FAXサーバ、データベースなどを連携させたコールセンター・システムの構築を多数手がけてきた。

従来、DeCallでは、そうしたコールセンターの業務ごとにコンポーネントを開発し提供するかたちをとっていたという。

「以前のDeCallでは、顧客情報のポップアップ表示やコールのエスカレーションなどのインバウンド業務、顧客情報に基づいたキャンペーン作成などのアウトバウンド業務、遠隔地からのWebやモバイル端末を使ったアクセス、顧客応対の参考情報としてのナレッジデータベースの閲覧などというように、業務・用途別に基本コンポーネントを分けていた。また、通話の録音・検索・再生や、緊急応対の警告、IVRなどは、拡張コンポーネントとして提供していた」(中島氏)

それに対し、デコールCC.CRMでは、これらコンポーネントを主要機能として統合・整理。顧客情報のポップアップ表示やエスカレーション、FAQナレッジなどの約20機能を「顧客接点・関係管理(マルチチャネルCRM)」としてまとめたうえで、あらたに集計・分析・グラフ機能やデータ出力機能を強化し、顧客情報を多角的に分析できるようにした。

「例えば、応対情報について、受付した月/曜日/時間/担当者や対応した月/曜日/時間/対応者といった項目ごとに自動的に集計・グラフ化したり、『製品の問い合わせ』『拡販キャンペーン』といった受付区分について月ごとの件数を見たりといったことが可能。これらは、標準テンプレートとして提供されるほか、コールセンターの状況に合わせて柔軟にカスタイズすることができる」(中島氏)

また、Webアクセスやモバイル・アクセスは「CRM情報活用」機能に、電話の転送や発信リスト作成といった業務は「CTI連携」機能としてまとめた。中島氏によると、このように「インバウンド業務とアウトバウンド業務をCRMの視点から統合した」ことが大きな特徴という。

加えて、最新版では、「セキュリティ対策/IT統制支援」機能と、「仮想化/シンクライアント対応」機能も追加された。セキュリティ対策/IT統制支援としては、PC監視システムと連携することで、不正PC持ち込みの検出、PC操作の不正検出、IT資産管理、マルウェア侵入防止などに対応。一方、仮想化/シンクライアント対応としては、VMware、Xen、Hyper-Vなど主要な仮想化環境をサポートし、サーバ側でOS/データを一元管理することで、クライアントからの情報漏洩を防止する。

中島氏は、こうした機能強化のほか、マルチベンダー対応とワンストップ・サービスの提供が他社との差別化ポイントであることを強調する。

「CTIは多数のベンダーのPBXとの連携ができるため、現在使用しているPBXをリプレースすることなく、電話を最大限に生かしたコールセンターの構築可能だ。また、IVRやSIPサービスといった音声ソリューションとの統合、既存のCRMシステムと連携するためのノウハウも蓄積しており、システム導入時の課題分析から、構築・運用支援までをワンストップで提供できる。これらは、長く通信/ネットワークのシステム開発をてがけ、コールセンター業務に精通したエンジニアを抱える当社の強みだ」

価格は、330万円(30席)から。販売目標は初年度30セット。売上げ目標は、CTI/CRM事業全体で年間10億円を掲げている。