米国の大手アナログ半導体ベンダAnalog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは9月5日に東京で記者会見を開催し、同社の産業用アナログ半導体の事業展開と最新製品を報道関係者向けに解説した。
始めにAnalog Devicesの高精度信号処理(Precision Signal Processing)部門でバイス・プレジデントを務めるDick Meaney氏が、同社の事業概要を説明した。
Analog Devicesの売上高は2007年度に25億ドル。製品別では売上高の44%をコンバータIC(A/D変換器ICおよびD/A変換器IC)が占める。次いでアンプICが22%となっている。同社によると、コンバータICと高性能アンプICでは市場シェアでトップを占めるという。
地域別の売上高では北米市場が26%と最も高く、欧州市場が24%で続く。日本市場は20%、中国市場は13%である。応用分野は多岐に渡り、産業・計測分野、デジタル民生(デジタルコンシューマ)分野、車載(オートモーティブ)分野、ヘルスケア分野、テスタ(ATE)分野、コンピュータ分野、無線インフラ分野などで同社の製品が使われている。
日本法人であるアナログ・デバイセズの応用分野別売上高も紹介した。デジタル民生(デジタルコンシューマ)分野が最も大きく、売上高の59%を占める。日本市場での売り上げを日本法人の売り上げと考えると、日本におけるデジタル民生の売上高は25億ドル×20%×59%で約3億ドルになる。
ここでMeaney氏は、話題を今回のテーマである産業用アナログ半導体に戻した。Analog Devicesの産業用アナログ半導体の売上高は2003年度~2008年度に年平均成長率14%で伸びており、産業用アナログ半導体市場の年平均成長率11%を上回っている。
続いて産業用アナログ半導体の市場規模(SAM:Served Available Market)をセグメント別に分割して示した。計測機器(Instrumentation)が8億7500万ドル、プロセス制御(Process Control)が3億8,500万ドル、モーション制御(Motion Control)が3億ドル、計量(Metering)が2億4,000万ドル、セキュリティ/監視装置(Security/Surveillance)が9,500万ドルである。全体では19億米ドルになる。Analog Devicesはその約3分の1を占めているという。
なお左下枠内に「ADIの2007年度産業用IC SAM」とあるのは、「2007年度産業用アナログ半導体 SAM」の誤りなので注意されたい。
そして(1)計測機器(Instrumentation)、(2)モーション制御(Motion Control)、(3)プロセス制御(Process Control)、(4)ビルディング制御(Building Control)の各分野における産業用アナログ半導体製品の開発状況を解説した。
計測機器とモーション制御は高精度信号処理部門でプロダクト・ライン・ディレクタを務めるLeo McHugh氏が、プロセス制御とビルディング制御は同部門で同じくプロダクト・ライン・ディレクタを務めるMike Britchfield氏がそれぞれ説明にあたった。
Analog Devicesの高精度信号処理部門でプロダクト・ライン・ディレクタを務めるLeo McHugh氏 |
Analog Devicesの高精度信号処理部門でプロダクト・ライン・ディレクタを務めるMike Britchfield氏 |
計測機器用では、4個のD/A変換器を内蔵し、積分非直線性誤差(INL)が16ビット±1LSBで5V電源のIC「AD5064」と、消費電力が7mW(1Mサンプル/秒)と低い18ビットA/D変換器IC「AD7982」が目を引いた。モーション制御では分解能が可変のレゾルバ・デジタル変換器(RDC)IC「AD2S1210」が興味深かった。いずれの製品も今年(2008年)の9月に量産を開始する。
またプロセス制御用では、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)を内蔵した低雑音24ビットΣΔ方式A/D変換器IC「AD7190」が目を引いた。データ出力速度が2.4kHzのときに16.5ビットの雑音フリー分解能を有する(ゲインは128)。