EMCジャパンは3日、同社の提供するECM (Enterprise Contents Management) 製品の新バージョンとなる「EMC Documentum 6.5」を発表した。Documentumは社内に蓄積された多種多様なコンテンツをひとつの共有インフラストラクチャ内で一元管理することができる、企業向けのコンテンツ管理ソリューション。コンテンツ管理プラットフォームの再構築を実現したDocumentum 6.0に引き続き、6.5ではそのプラットフォーム上で動作するアプリケーションの充実およびポートフォリオの拡大を目指したという。
DocumentumによるのEMCのコンテンツ管理製品戦略
Documentumはもともと製薬業界向けに開発されたコンテンツ管理製品であり、現在では世界のシェアの8割以上を占めるデファクトスタンダードになっているという。同社CM&A事業本部 本部長の古根川哲也氏によれば製薬業は最も早くコンテンツ管理を導入した業種だという。その背景には、新薬を開発した場合の特許切れまでの専売期間が、薬事申請に要する時間に左右されるという業界特有の事情があるからだ。
特許出願から薬事申請が完了するまでの期間を縮めれば、その分だけ専売期間が伸びて売上げに大きく影響する。一方で、日本とアメリカ、ヨーロッパの3局同時申請が業界の常識となっており、申請に必要となるドキュメントの量が膨大なため、その作成作業は困難をきわめる。そこで申請期間の短縮に効率的なコンテンツ管理が必要不可欠となってくるわけだ。
そして近年では、製薬業界で培ってきたコンテンツ管理のノウハウが、他業種からも注目されるようになってきたと古根川氏は語る。例えば薬事申請のレギュレーションである「21 CFR Part11」は様々な医療機器にも適用されているし、薬品製造工程で用いられる「SOP (Standard Operation Procedures) 管理」は各種製造業における標準メソドロジーになっているとのこと。
このような市場の動向を見据えて、Documentumのビジネスも製薬業界だけではない様々な業種へと展開している。Documentumではターゲットとなる業種/業務に合わせたコンテンツ管理機能を提供するため、以下の写真に示すように「コンプライアンス」「トランザクション」「リッチメディア」「コラボレーション」という4つのカテゴリに分類した製品の提供を行っているとのこと。
またそれに加えて、「One EMC」と呼ばれる統合的なコンテンツ管理ソリューションの提供も行っている。One EMCでは、EMCの提供する (コンテンツ管理に限らない) 様々な製品群を組み合わせることで、コンテンツ管理プラットフォームにセキュリティや仮想化、ストレージ管理といった機能を統合する。これによってエンタープライズのニーズに耐える充実したコンテンツ管理が実現できるとのこと。
Documentum 6.5の概要
さて今回発表されたDocumentum 6.5では、6.0で実現したコンテンツ管理プラットフォームの上でWeb 2.0を取り入れた操作性の高いアプリケーションを充実させることにより、製品のポートフォリオを拡充することが主な狙いとのこと。具体的には、以下の5つの新製品の追加と、5つの機能強化が行われている。前述のカテゴリ分けに対する各製品の位置付けはに示す通り。
○新製品
- CenterStage Essentials - Documentumのコンテンツにアクセスするためのユーザ向けクライアント
- My Dosumentum - WindowsのエクスプローラやMac OSのFinderからDocumentumのコンテンツへアクセス可能にする
- Media WorkSpace - リッチ・メディアデータの管理のためのワークスペース
- FRS (Federated Records Service) - ビジネス・コンテンツを内部統制やコンプライアンス目的で保存・一元管理する
- High-Volume Server - 大容量アプリケーション向けに一元化/最適化されたコンテンツ管理サービスを提供
○機能強化
- Web Publisher Page Builder - FlexベースのUIでコンテンツ公開のためのWeb作成をサポート
- TaskSpace - タスク管理と書類管理により事務手続きの効率化を実現する
- Process Suite - Web 2.0ベースのUIによりプロセス処理を目的とするアプリケーションの操作性を向上させる
- Forms Builder - 紙の申請書類を忠実に再現した電子フォームを作成可能
- BAM (Busicess Activity Monitor) - プロセスの進捗やパフォーマンスを監視するモニタ機能を提供
今回追加された機能の中でも、特に注力されているのがユーザインタフェースの充実による操作性の向上である。例えば「CenterStage」はDocumentumのコンテンツにアクセスするための全く新しいユーザ向けクライアントであり、Web 2.0を組み合わせたユーザ・フレンドリーなインタフェースを備えているという。アクセス権管理やチーム別の作業領域など、社内外でのコラボレーションをサポートする各種機能も提供される。今回発表されたCenterStage Essentialsは無償で提供され、来年にはより高機能な有償版であるCenterStage Proがリリースされる予定とのこと。
また、リッチ・メディアデータの管理には「Media WorkSpace」が優れた操作性を提供してくれる。同製品ではマルチメディア・コンテンツの動的なプレビューや検索、比較、コメント付け、共有などが可能であり、公開までの作業効率を格段に向上させるという。
同社マーケティング本部 Content Management & Archiing マーケティングマネージャの杉本奈緒子氏は、Documentum 6.5について「Web 2.0の技術を採用しながら企業のリスクを回避する、企業内の"新しい働き方"を提供する製品群」だと紹介している。すなわち、Documentumの優れたコンテンツ管理機能をバックエンドに置きつつ、Web 2.0ベースの優れたユーザ・インタフェースによって日々の業務を劇的に改善するということだ。それに加え、社内外の人と人を繋ぐポータルとしての役割も備え、コラボレーションを促進するとのこと。
Documentumは製品ファミリであるため提供価格はコンポーネントの組み合わせ次第ということになるが、コンテンツ管理の基本的な機能を網羅した上で1ユーザライセンスあたり8万円くらいが目安になるとしている。各製品の販売は発表にあった9月3日より開始されており、1年間で100セットの販売を目指すという。