総務省情報通信審議会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」はこのほど会合を開き、6月に発表した中間答申に対する意見募集の結果について議論した。寄せられた意見では、「著作者の権利を制限するネット法に反対」とした同答申に対し賛否両論が噴出。委員からは「ネット法の効果を検証してはどうか」とする意見も出た。
中間答申は「ネット法」に反対姿勢
同検討委員会では、「ダビング10」や「B-CASカード」などについても議論してきたが、今回の会合で委員らが最も激しく反応したのが「ネット法」に関して寄せられた意見だった。
ネット法とは、今年3月、民間研究団体「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」が発表した、ネット上の著作権を制度的に制限しようとする案。同案では、ネット上の流通に限定した、デジタル・コンテンツの使用権(ネット権)を創設。このネット権を、映画製作者や放送事業者、レコード会社に付与し、著作権者は、コンテンツのネット上での使用に対する「許諾権」を制限されるとしている。自民党の小委員会でも議論されている。
このネット法の案に関して、総務省の検討委員会の議論を反映させた第五次中間答申では、「インターネットの流通だけを特別扱いし、そのコンテンツの利用、配給に関して、番組製作者、権利者の発言権を封じるというようなことは、番組製作者、権利者の軽視であり、コンテンツ文化の軽視に根ざした発想である」とし、反対の姿勢を明確に示した。
「意見聞いてもいい」と柔軟姿勢示す委員も
同中間答申に対して寄せられた意見でも、ネット法に対する賛否両論が噴出。「実演家ら権利者の許諾権を剥奪する案に反対」「インターネットを特別視して権利者の権限を制約したとしても流通が拡大しない、との考えに賛同」など、中間答申の立場に理解を示す意見もあった。
一方、「情報通信審議会が独自の問題意識に拘泥することなく、コンテンツの競争力を強化するためにはどのような法制度が必要であるかについて、再度早急に検討することを求める」など、中間答申への異論もあった。
これに対し、検討委員の日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫氏は「ネット法関係者からわざわざヒアリングする必要はない。許諾権がコンテンツ流通の阻害要因になったことはなく、政府・与党内の議論はおかしい」とネット法の議論に激しく反発した。
委員のホリプロ社長、堀義貴氏も、「誰が悪いとか犯人探しをするのではなく、コンテンツ大国になるにはどうすればいいのか大きな視点で議論をすべき」と訴えた。
これに対し、「ネット法を提唱している人の意見を聞くことには反対しない」と柔軟な姿勢を見せる委員も。委員の慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏は、「ネット権やネット法は一つのアプローチ。その是非を論じるためには、もし導入すればどうなるかのシミュレーションが必要ではないか」と提案した。
同検討委員会では、意見募集結果に関するこれらの議論をまとめた上で公表する予定。