米カリフォルニア州北部の連邦地方裁判所で、動画共有Veohのサービスがデジタルミレニアム著作権法 (DMCA)のセーフハーバーの対象になるという判断が下された。同様のサービスを提供するYouTubeがViacomから著作権侵害で訴えられている訴訟にも影響を及ぼす可能性がある。

これはアダルトコンテンツを取り扱うIo Groupが、同社が権利を持つ動画コンテンツがVeohにアップロードされていたことから2006年に起こした著作権侵害裁判だ。米国では90年代後半に、著作権侵害訴訟がインターネットサービスプロバイダーのようなサービスにまで波及するのが防ぐために、オンラインサービスプロバイダーを対象としたセーフハーバーがDMCAに設けられた。違法行為が通知された場合に削除する義務を果たせば、著作権侵害などの責任は問われない。Veohのケースでは、同サービスがセーフハーバーの条件を満たすサービスプロバイダーであるかが焦点となった。

Io側は、実名登録やIPアドレスを追跡するような仕組みを設けなければ、同じ人物が偽名などを使って違法行為を繰り返す可能性があると指摘した。これに対してHoward Lloyd判事は、ネット利用において実名登録を条件とするのは現実的ではないとし、またIPアドレスの追跡についても、複数が同じアドレスを共有できることから条件として適切ではないとした。一方Veohの対応については、これまで1000人を超える著作権侵害者を特定・排除してきた実績から、セーフハーバーの条件を満たすと判断した。Io側はまた、動画がアップロードされる際にFlashに変換するステップを踏むVeohの仕組みでは、同サービスが動画コンテンツを管理していると指摘。その過程で、著作権違反をチェックすべきと主張した。これについてもLloyd判事は、ユーザーによるアップロードの監視がセーフハーバーの条件ではないという見解を示した。以上の点から、Veohは同社のサービスにアップロードされたコンテンツに対して著作権侵害の法的な責任を負わないとして、Ioの訴えを退けた。

この判決は、YouTubeとViacomの係争への影響という点でも注目されている。YouTubeはデジタル指紋技術によるフィルタリングや音声マッチングなどを導入しているものの、それらはアップロード後の対策であり、動画のアップロードをスクリーニングしないのが違法行為を助長していると指摘されている。だが、今回の判例に照らし合わせると、YouTubeも現状の著作権対策で生き残れる可能性が高まる。